今日チュニジア戦…南野拓実と三笘薫の左ウイング序列争いに注目!
4-3-3で南野を起用するならば、むしろインサイドハーフの方がはまるはずだ。しかし、アジア最終予選で1勝2敗と出遅れ、負けが許されなくなった昨年10月のオーストラリア代表戦で、森保監督はボランチの守田英正(27、サンタ・クララ)と田中碧(23、フォルトゥナ・デュッセルドルフ)をインサイドハーフで起用した。 アンカーにすえた遠藤を含めて、中盤にボランチタイプを3枚起用する布陣でまずは守備を安定させた。オーストラリアを2-1で下すと、勝っているチームはいじらない、なるサッカーの格言を指揮官は愚直に実践。6連勝で7大会連続7度目のワールドカップ出場権を射止めるまで、南野は左ウイングで固定された。 不慣れなポジションで試行錯誤を繰り返しながら、南野はアジア最終予選を戦う過程でひとつの答えを見つけた。これまでも三笘を「薫のドリブルは日本の非常に大きな武器。彼を上回ろうとは考えていない」と称賛していた南野は、チュニジア戦前日に応じたオンライン取材でも左ウイングに対する持論を展開している。 「自分の仕事をすることだけを考えている。それは自分の強度の高さや攻守の切り替えの速さもそうですし、ブラジル戦でも思ったんですけど、自分の特徴は中でプレーすることなので。そうしたところを生かしながら、味方との距離感であるとか、狭いエリアでターンして前を向くとか、そういうプレーができれば」 相手ボール時はリバプール仕込みのインテンシティーの高いプレスや、攻守の切り替えの速さを駆使して前線からの守備で貢献する。一転して日本ボールになればウイングとして幅を取るのではなく、1トップとの距離を縮めて相手ゴール前でプレーする。 もっとも、アジア最終予選ではボールを収められる大迫が1トップだったからこそ、近い距離でのプレーが可能だった。本来は自らがケアするべきスペースを左サイドバックの 長友佑都(35、FC東京)か、インサイドハーフのどちらかが埋めた。 チーム全体で工夫を施したものの、アジアを勝ち抜き、照準をカタールワールドカップにすえて臨んだブラジル戦では、守備面こそ奮闘したものの、前述したように攻撃面ではほとんど何もできないままベンチへ下がっている。 自身と入れ替わる形で後半27分から投入され、左サイドから果敢にドリブル突破を仕掛けるも、DFエデル・ミリタン(24、レアル・マドリード)に完璧に対応された三笘の方が、ブラジルに喫した完敗に近い黒星を介して収穫を得た。 「プレーの幅を広げる、というひと言に尽きる。もっと相手に選択肢を与えて、怖い存在だと認識させるようなプレーをしないといけない。シュートはもちろん、ドリブルやクロスといったところのバリエーションと質が求められてくる」 ブラジル戦への反省を込めながら、三笘はガーナ戦を前にこう語っていた。対戦相手のレベルの差もあるものの、ガーナ戦の舞台となったノエビアスタジアム神戸で演じたMVP級のパフォーマンスを介して左ウイングでの序列を大きく上げた。 平等にチャンスを与える意味でも、チュニジア戦では南野が左ウイングで先発するだろう。それでも、開幕まで5ヵ月あまりに迫ったカタール大会へ向けて「ベースをより強固に浸透させながら、戦う選択肢を増やしていく」と6月シリーズのテーマをあらためて掲げた森保監督は、南野の起用法にも柔軟性を持たせるべきではないだろうか。 具体的には上田綺世(23、鹿島アントラーズ)が負傷離脱した1トップか、あるいはインサイドハーフ。特に後者は田中に加えて鎌田、久保、原口元気(31、ウニオン・ベルリン)、柴崎岳(30、レガネス)と今シリーズで選択肢が一気に豊富になった。 ウイングでのプレーで募らせているストレスから南野を解放し、本来の得点力を再び呼び起こし、周囲との新たな組み合わせを介してチーム力を上げる可能性を見いだす。自身がまだ見ぬワールドカップへ、「最高のコンディションで迎えたい」と静かに意気込む南野を生かす作業もまた、代表監督に求められる仕事となる。 6月シリーズを終えれば、カタール大会までにマッチメイクできる強化マッチは9月後半の2試合だけとなる。今回は開幕直前のキャンプもほとんど実施できない。4-3-3を継続させる限り抱え続ける「左ウイング問題」を解消しない限り、日本の攻撃は右サイドに大きく偏り、相手が対策を講じやすい悪循環を生み出していく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)