バッドボーイズ・清人と、大好きなおばあちゃんの思い出。楽しい記憶だけじゃない! 入り混じる感情が哀愁をさそうコミックエッセイ『おばあちゃんこ』【書評】
本作は、お笑いコンビ「バッドボーイズ」の清人(きよと)さんが、完全実話とうたっている自伝マンガだ。小学生のとき、目が不自由なおばあちゃんと、そのおばあちゃんの3人の息子と同居していたときの日々を描いている。 【漫画】本編を読む
おばあちゃんに「今日は吉永小百合に似ている」と言って笑いあい、一緒に食事に行っておいしさを分かちあうなど、平穏で楽しい日々が描かれている。しかし、家族の住む家は、基本的に次男しかまともに働いておらず、家計は火の車。長男は大酒飲みで頻繁に暴れることもあり、安心できる環境とはいいがたい。 おばあちゃんは目が不自由なので、自分の靴下に穴があいていることに気がついていなかったり、オンボロの家には、梅雨時に雨が降るとかたつむりが入ってくることがあったり、何気ない日常のリアルな様子が描かれているのも、ご本人の体験談ならでは。そして、おばあちゃんとのやりとりさえも楽しいだけでは終わらないのが秀逸だ。 おばあちゃんの手をひいて歩くのを見られ、同級生からバカにされたり、遠足のときに作ってくれたお弁当がぐちゃぐちゃだったり。そんなときには子供ながらに恥ずかしくて、居心地の悪さを感じてしまう。 でも、それを恥ずかしがる自分がいけないのだと、子供ながらに目が不自由なおばあちゃんに気をつかい、またおばあちゃんを笑わせようとする姿が涙をさそう。 たんに楽しかったエピソードだけを描いていたら、このような哀愁のただよう読後感にはならなかったはずだ。ほんわかと、あたたかい気持ちになる普通の家族の物語とはすこし違う、ひとクセもふたクセもある本書に触れてみてほしい。 文=ネゴト / たけのこ