「トラックドライバー = かわいそう」という欺瞞! 荷主&メディアの餌食にされるのは、いつも現場労働者である
既に発生している「痛み」
「物流の2024年問題」を筆頭とする物流クライシスにおいて、痛みは既に始まっている。これらの痛みは解消できるものばかりではなく、消費者には今、痛みを受け入れる行動変容も求められている。 例えば最近、スーパーマーケットなどの店頭に並ぶ一部の加工食品の賞味期限がやけに短いことに気がついている消費者もいるのではないか。筆者は、スティックパンや子ども向けのパンをよく購入するのだが、以前であればある程度の余裕があった賞味期限が、最近では2~3日程度の余裕しかないことが多くなったと感じている。 ほかにも、スーパーマーケットやコンビニエンスストアでも、最近商品棚に空きが目立つことに気がついている消費者もいるのではないか。前者は、食品業界の商慣習であった1/2ルール・1/3ルール撤廃の結果であり、後者は配送回数削減の結果である。 食品の1/2ルール・1/3ルールとは、製造日から賞味期限(あるいは消費期限)の期間のうち、1/2ないし1/3以内の期間に小売店まで届けなくてはならないという業界の商慣習であった。配送回数の削減について、例えばローソンでは2023年12月から弁当・麺類・おかず・サンドイッチなどのチルド・定温商品の店舗配送頻度を、それまでの1日3回配送から2回配送に切り替えている。同様の試みは、他の小売店でも順次開始されている。 食品に限ったことではないのだが、これまで物流業界は、消費者や企業の「今欲しい」に対応するため、顧客が欲しいタイミングで輸送を行っていた。その結果、賞味期限まで余裕を持った食品が店頭に、しかも常に豊富に並んでいた。 だがこのやり方では無駄が生じる。極論だが、例えば弁当ひとつ、例えば卵1パックしかなくても、トラックを走らせる必要があり、これが積載効率の低下につながるからだ。配送のリードタイムに余裕を持たせたり、あるいは配送の回数を減らしたりすることで、今まで分散していた荷物を集約し、より積載効率を高めることができる。 結果、トラック輸送の効率を高めることができるのだが、その副作用が、「賞味期限の短いパン」であったり、「空きが目立つスーパーやコンビニの棚」であったりするのだ。