生ごみを減らしたら町に図書館が建った 食品ロス削減で暮らしは豊かになるのか? #くらしと経済
2019年10月に食品ロスを減らすための法律「食品ロス削減推進法」が施行されてもうすぐ丸5年が経つ。6月に発表された2022年度の食品ロスは推計472万トンだった。政府は、今回初めて、食品ロスによる損失金額の推計値も発表。本来食べられるのに廃棄されてしまう食品のために家庭などが余分に負担している金額を合計すると、その額は年間4兆円に上った。食品ロスが一切なくなり、年間4兆円の損失が出なかったなら、わたしたちの暮らしは豊かになるのだろうか。 食品ロス問題を長年取材してきた井出留美氏に、食品ロスと暮らしのお金の問題について解説してもらった。(文:井出留美/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
生ごみを減らして図書館が建った
「生ごみといえば大木町」 食品ロスを含む生ごみを減らし、その浮いた費用で図書館を建設した自治体がある。 福岡県大木町だ。人口約1.4万の小さな町に毎年、全国の自治体や企業、大学の関係者など数千人が視察に訪れている。
町のターニングポイントは「分別回収」の開始。2006年から家庭ごみの燃やすごみの中から生ごみを分け始めた。その結果、2005年に最大2295トンあった燃やすごみが急減。最も少ないときは914トン(2018年)まで減ったのだ。さらに分別された生ごみはメタン発酵させ、液肥(液体の肥料)にし、町民が無償で使えるようにした。 生ごみを資源としてリサイクル利用することで年間約3000万円のコストカットを実現。浮いた費用で図書館を建てたり、町民が使うホールを建設したりすることができた。生ごみの分別が上手に行えている地区は「生ごみ分別優良地区」として表彰され、町の温泉施設の入浴券が配布される。食品ロスを含む生ごみを燃やさず資源として活用することで、町民のメリットになったのだ。 町のごみ処理施設を運営する一般社団法人サスティナブルおおきのバイオマスセンター長の松内宏暁さんは、日本のごみ処理についてこう話す。 「ほとんどの自治体が焼却処理を行っているのですけど、ものを使ってすぐ捨てて、燃やされるという一方通行の流れになっています。しかも燃やすことで温暖化の原因にもなっている。大木町では環境に負荷を与える処理方法を減らしていきたい。ごみを資源として活用していこうという考え方でまちづくりを進めていっております」 また、京都市は、2000年度に年間82万トンあったごみを2019年度には41万トンまで削減した。その過程で5つあったクリーンセンター(ごみ処理施設)を3つまで減らすことに成功。2002年度に367億円かかっていたごみ処理費用は、2019年度に224億円となり、100億円を超えるコストカットにつながった。行政の場合、浮いた費用は教育や福祉、医療、雇用などに充当することができる。 日本全体で費やす一般廃棄物の処理費は年間2兆1500億円以上。焼却施設の維持費も含まれるのでゼロにはできないが、ごみ処理費が浮けば、その分が自分たちの暮らしのために新たに使えることになる。 では、行政ではでなく民間企業が食品ロス削減に取り組むことに意味はあるのだろうか。