「アイソン彗星」どんな姿で現れる? 太陽に29日最接近
日増しに期待が高まる「アイソン彗星」。どんどん太陽に近づき、急に明るさを増している。太陽に最接近する今月29日午前4時9分(日本時間)までには明るさもマイナス等級に達し、夜明け前の東の空に長く尾を引く“ほうき星”の姿が肉眼でも見られるかもしれない。
昨年9月に発見された
アイソン彗星は、昨年9月に「国際科学光学ネットワーク(ISON)」に所属するベラルーシとロシアの2人の天文学者が40センチメートル反射望遠鏡で発見し、その後の複数の観測で“彗星”と確認されたことから「ISON彗星」の名前が付いた。 国立天文台などによると、アイソン彗星は、氷と岩石からなる直径約5キロメートル“核” が本体で、太陽に接近すると核からガスや塵(ちり)が蒸発し、長い尾を引く。核の大きさは標準タイプ(直径1~10キロメートル)で、軌道の分析から、太陽系の周辺を取り巻く、太陽と地球の平均距離(1天文単位)の1万~10万倍も遠い所の「オールトの雲」と呼ばれる領域から来たとされる。「オールトの雲」には彗星の元となる天体が1兆個はあるという。
二度と戻ってこない彗星
アイソン彗星の特徴は、ハレー彗星などの周期性をもって太陽を回る彗星と違い、一度だけ太陽を回って再び戻って来ない彗星だということ。しかも、今月29日に太陽に最接近する時は、半径70万キロメートルの太陽の表面から120万キロメートル離れた所をかすめ通る。このような太陽を“かすめる(グレイズする)”彗星は総称して「サングレイザー」と呼ばれ、過去には2011年12月に太陽表面から約13万キロメートル通過した「ラブジョイ彗星」、1965年10月に約46万キロメートルを通過した「池谷・関彗星」などがある。 このように太陽のすぐそばを通るサングレイザーの彗星は、100万度以上ある太陽のコロナに焼かれて蒸発するか、本体の核が分裂、崩壊するなどして、消えてしまう可能性もある。しかし、直径が500メートルと推定される小さなラブジョイ彗星は、太陽に最接近(近日点通過)後も生き残った。池谷・関彗星は近日点通過の直前に核が3つに分裂し、1つは1か月後に消滅したが、2つは残存して今も太陽を公転している。アイソン彗星がどのような運命をたどるのかも、今回の大きな関心事の1つだ。