【レパードS回顧】“最大の敵”1枠1番を克服したミッキーファイト 名手・戸崎圭太騎手の手腕も光る
兄ジュンライトボルトに続け
東京トゥインクルファンファーレの東京ブラススタイルが来場し、演奏で盛りあげた。今年から10月大井のジャパンダートクラシックのトライアルに生まれ変わったレパードSは、例年以上の激戦になった。やはり各陣営のこのレースにかける意気込みは明らかに昨年までとは違った。色々と改善すべき点は残されているものの、ダート三冠創設はJRA側にとっては歓迎すべき出来事。目標設定が高ければ、全体のレベルは自然と上がっていく。それは開催中のパリ五輪でも目に見えて伝わってくる。 【レパードステークス2024 推奨馬】世代トップクラスの実力、騎手は過去10年で複勝率71.4%! SPAIA編集部の推奨馬を紹介(SPAIA) ジャパンダートクラシックへの切符を手にしたのはミッキーファイト。これで4戦3勝。唯一の敗戦は、こちらも東京ダービートライアルに生まれ変わったユニコーンS。このレースも新たな立ち位置になり、ハードな条件で行われ、目に見えてレースレベルが上昇した。勝ったラムジェットは東京ダービーを制し、2着サトノエピックも同2着。当然、3着ミッキーファイトは実績最上位だ。ユニコーンSでは勝負所で進路がなく、待たされたのが痛かった。サトノエピックとの0秒3差は無いに等しい。 3代母エアグルーヴという確かな血統背景をもち、母スペシャルグルーヴの産駒には中京記念を勝ったグルーヴィット、チャンピオンズCを制したジュンライトボルトがいる。デビューできた6頭はすべて勝利をあげており、優秀な繁殖牝馬だ。ミッキーファイトにもジュンライトボルトに続くダートチャンピオンへの期待がかかる。
絶妙だった2コーナー出口
その道を切り開くためにもレパードS制覇は欠かせない。託されたのはレモンポップを管理する田中博康調教師。慎重な仕上げと的確なレース選択に定評がある厩舎のジャッジは「素質は世代最上位も未完成な面が残る」。レパードS制覇によって陣営はどんな判断を下すだろうか。ジャパンダートクラシックにはラムジェットはおろか、フォーエバーヤングも参戦を表明。これら2頭に挑める状態まで高められるか。今後の去就を楽しみにしよう。 レパードSでの最大の課題は相手関係ではなく、枠順だった。ダートの1枠1番は決して優位とはいえない。砂をかぶり、勝負所の立ち回り次第で外から先に動かれ、ポジションを悪くする可能性もある。この日はスタートを決めた後、1コーナー入り口でやや内に押圧される場面もあったが、雄大な馬体でそのプレッシャーも跳ねのけ2コーナー出口を利用して好位の外に持ち出せた。 正直、ここで勝負ありだった。まだ経験が浅い3歳馬にとって、大事なのは自分のフォームで気分よく走れること。馬群に入った場合、ストライドを上手に伸ばせず、リズムを乱しかねない。ユニコーンSの勝負所のように。さすがは名手・戸崎圭太騎手。同じ道を二度はたどらない。見事なアシストで、ミッキーファイトが実力を発揮できる態勢をつくった。あとは目標を間違えず、仕掛けのタイミングを待つ。幸い、目の前のサトノフェニックスが抜群の手応えで抜けたことで、シンプルに前を交わすだけという競馬。完勝だった。 ミッキーファイトが難なく抜け出す競馬ではあったが、レース自体は非常に過酷だった。ブルーサンは序盤600m35.7、1000m通過1:01.0で進んだ。22、23年の1000m通過1:00.5よりは遅いが、古馬3勝クラスとそん色ない流れ。今年の新潟では7月28日12R2勝クラス麒麟山特別が同等の1:01.1で進み、最後は4コーナー13番手ヒューゴの追い込みが決まった。古馬も残れないハイペースのなか、ラスト400mは12.4-12.2と加速ラップを描いた。ミッキーファイトのポテンシャルは間違いない。反動を心配するほどだが、そこは田中博康厩舎。的確にジャッジしてくるだろう。