ボクシング界が7月興行再開を目指す理由…無収入で「そろそろ限界」の経営危機ジムとボクサーを救う
プロボクシングのJBC(日本ボクシングコミッション)とJPBA(日本プロボクシング協会)による新型コロナウイルス対策連絡協議会が1日、オンラインで行われ、営業休止を余儀なくされている全国のジムからの経営危機に直面している悲痛な声が報告され、今後、政府や自治体に休業補償の充実などを訴えていく方針を決定した。ジムと選手を救済する手段のひとつが、6月末までの中止が決定している興行の再開。協議会では、条件付きで7月からの再開を目指す方向性も確認された。開催が危ぶまれていた全日本新人王戦に関しても、東日本予選では、医療従事者の選手などから辞退者が約20人も出たため皮肉にも日程調整が間に合い7月5日の中日本予選を皮切りに全国で予選をスタートできる可能性も出てきた。 全国282カ所にあるプロボクシングジムの多くが新型コロナによる休業のため存続危機に追い込まれている。この日の協議会では、悲痛な声が届けられた。 「ジムの運営が立ちゆかなくなるとの悲痛な叫びがある。そろそろ限界に達している。政府や自治体の休業支援金などの助成金や(無利子・無担保)融資は利用していきたいが、それでも、追いつかないのが現状。基本、政府や自治体の自粛要請には従う考えだが、現実問題を政府、自治体、政界、財界へ訴えていきたい」 JPBA事務局長の新田渉世氏(川崎新田ジム会長)は、そう明かした。 「家賃の支払いをして運営をしているジムが多い。休業することで収入がほぼなくなる状況で、高額な家賃を支払い続けるのは難しい。(一部の自治体からは)家賃の対策制度なども提示されているが、これ以上、(休業を続けたまま)維持をするのは難しい」と続けた。 大手を除きほとんどのプロジムの経営形態は飲食店に似ている。収入の多くを会員の会費が占め、そこに年に数度の興行収入がプラスされる。支出は、家賃、光熱費の固定費と、トレーナーなどの人件費。営業休止で、その月会費がストップするが、支出は変わらないため、必然、経営は赤字となり危機に追い込まれる。オンライン指導などを取り入れているジムもあるが、飲食店と違いテイクアウトなどの工夫も難しい。 しかも、6日に終わるはずだった緊急事態宣言の1か月の延長がほぼ決定。あと1か月、要請に従い休業を続ければ、「ただお金が出ていくだけ」の悲惨な状態がまだ続く。 「立ち行かないのであれば、もう営業自粛要請に従わないで、営業せざるをえない。それを協会も検討すべきではないか、との声もあがってきている」と、新田事務局長は明かしたが、切実な声が出てくるのも無理はないだろう。 7日に開かれるJPBAの臨時理事会で、今後の対応と、政府、自治体に対する休業補償要求のアクションを起こすことを正式決定するが、緊急事態宣言下で、ジムの営業再開をJBC、JPBAが許可することは社会情勢を考えると難しい。おまけに、名古屋のジムからボクサー2人、関係者2人の4人のジム内感染者を出してしまっている。