ボクシング界が7月興行再開を目指す理由…無収入で「そろそろ限界」の経営危機ジムとボクサーを救う
すでに6月末までの興行中止を決定していたが、この日の協議会では、7月以降の興行再開を目指す方向性が確認された。緊急事態宣言の推移、政府、自治体の対応、新型コロナウイルスの感染拡大状況を見ながら、プロモーターから、練習も含めた感染予防対策を盛り込んだ興行プランを提出させ、それを協議会で検討した上で認めていく方針が決定した。 すでに協議会は、興行する際、消毒薬の用意や、観客席の間隔を空けるなど、感染予防対策のガイドラインを発表しており、それにもとづいての興行プランを求める考え。現状では難しいが、出場選手のPCR検査の導入なども模索している。7月22日には、後楽園ホールで三迫ジムが興行予定。感染予防対策として、先日、ニカラグアで開催された興行などを「参考にしたい」という。 また7月から興行が再開できれば、世界への登竜門として歴史のある全日本新人王戦も開催可能であることも明らかにされた。1946年から東日本新人王としてスタートした全日本新人王戦。古くはファイティング原田から近年では、田口良一、伊藤雅雪らもここを踏み台に世界へとかけあがった。超エリートは出場資格の問題もあって新人王戦へは参加しないが、ネームバリューや実績がなくとも、のし上がっていける大きな舞台。 元WBC世界バンタム級王者、辰吉丈一郎も「できれば新人王に出たかった」と語ったほど。 本来なら、4月から全国で予選が始まり、東軍、西軍の代表を決め、12月に後楽園ホールで全日本新人王戦が行われる予定だった。だが、無観客で実施する予定だった4月5日の東日本予選が中止となり、もし出場選手の人数がそのままであれば、東日本は6月からスタートしなければ、日程を消化することができなかった。だが、新型コロナの影響で出場辞退者が約20人も出たために皮肉にも7月スタートでも調整がつくようになった。辞退者の中には「新型コロナの影響で準備のできない医療従事者のボクサーがいたり、家族の不安、ジムが止めたケースなどがあった」という。 社会情勢が動き、開催条件をクリアした場合、7月5日に中日本、7月26日に西日本、7月29日に後楽園ホールで東日本のそれぞれの予選開催が予定されており、「無観客になる可能性もゼロではない」と新田事務局長は言う。 ただ試合へ向けての練習、準備期間が必要となるため、1か月半から1か月前には、開催可否を決める方針。7月5日の1か月前となると6月5日。延長されることになる緊急事態宣言が、その後、どうなるか、微妙なタイミングではあるが、「緊急事態宣言が出されている状況下では興行はできない」と新田事務局長は断言した。 また延期となっていた、もうひとつの国内のビッグイベント、日本王者の指名試合であるチャンピオンカーニバルは、来年の同時期まで延期されることになった。各カードごとの協議で、年内にタイトル戦を開催することや、他の試合を挟むことも可能だが、勝者は、延期されたチャンピオンカーニバルで、指名挑戦者と対戦しなければならない。 7月にボクシングが戻ってくることが決まれば、それに伴い、存続危機に陥っているジムの一般会員への営業再開も可能になるだろう。 飲食店と違い、一度、退会した会員を取り戻すのは容易ではなく、たちまちV字回復するとは言えないのが現実だが、存続危機からは脱出できるのかもしれない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)