氷河時代の若者も10代で初潮や変声期を迎えていた! 最新研究で2万5000年前の思春期が判明
イタリア南部で発掘された遺骨の調査結果から、2万5000年前の氷河時代の人類も現代人と同じように、10代から声変わりや月経が始まっていたことが明らかになった。科学誌『Journal of Human Evolution』に掲載された論文によると、発掘された13人分の遺骨はいずれも約1万1000年前の10~20歳のものであると推定され、思春期から青年期に該当していたという。 今回の調査の対象となった遺骨は、イギリスのレディング大学で考古学を研究し、この論文の筆頭著者でもあるメアリー・ルイスが独自に編み出した手法によって分析された。思春期の段階を測定するにあたってルイスは、手と肘、手首、首の骨、そして骨盤の成熟度を分析したほか、犬歯がどれくらい鉱化しているかを測ったという。これにより、故人の声変わりや月経が始まっていたか否かを判別できるのだ。
これまで、有史以前の生活はすさんでおり、人類の寿命は短いものだと考えられていたが、遺骨を分析すると、当時の人類は健康的な生活を送っていたことがわかった。新たに発掘・分析された遺骨のほとんどは13.5歳までに思春期を迎え、17歳から22歳で成人期に達していたという。つまり氷河時代の若者は、現代の裕福な国々の若者たちと同じ時期に思春期を迎えていたのだ。 「遠い過去とつながって、当時の様子を完全に理解することは難しいですが、私たちは皆、形は異なれど思春期を経験しています」と、ナウエルは語る。「この研究によって、石器を分析するだけでは理解し得ない方法で、当時のティーンエイジャーの生活を垣間見ることができるのです」 こうしたなか、研究の対象となった遺骨のうちの一人で、「ロミト2」と名付けられた人物は、成長障害の一種である成長ホルモン分泌不全性低身長症だったと推測されており、遺骨の発達段階を分析したこの研究結果によって、ロミト2の身体的特徴や社会的役割を示す糸口も見つかったという。 思春期半ばで命を落としたロミト2は男性であると推測されており、成人男性と同じように声が低く、すでに精通を迎えていたとされている。だが、見た目は若く、低身長で、外見は子どもと変わらなかったことから、コミュニティ内における役割や地位に影響を及ぼしていたかもしれない。ロミト2の調査結果に対してリバプール大学の考古学者で、この論文の共著者を務めたジェニファー・フレンチはこう語る。 「氷河時代の若者たちの身体的特徴や発育段階に関する具体的なデータが解明されたことで、埋葬方法や死後の扱いにまつわる情報について新たな視点を見つけることができました」 今回の研究はビクトリア大学、レディング大学、そしてリバプール大学の他にも、モナコ先史人類学博物館、カリアリ大学、そしてシエナ大学が共同で行っている。研究が進むにつれ、氷河時代の青年たちはどういった生活を送り、どのような社会的役割をもっていたかが明らかになるだろう。
ARTnews JAPAN