世界文化賞受賞者5人の「もう一つの横顔」 それぞれに芸術の道を歩み、究める
■罰せられない犯罪問う
彫刻部門 ドリス・サルセド氏
彫刻家にしてインスタレーション・アーティスト。故郷のコロンビアで半世紀以上続いた内戦が創作活動の原点で、全ての作品は実際の暴力の被害者をモチーフにしている。「作品中、1点を選ぶとしたら」という問いに、こう答えた。
「一つ一つの作品は最大限の献身と愛情をもって作られており、被害者に贈るプレゼントのようなもの。どの被害者を選ぶかというのは難しい」
そして、活動の拠点であるスタジオについて説明を求めると、「一つ知っておいていただきたい」と前置きをして、自身が「法定盲人」であると明かした。
「視力を失いつつあったとき、私はチームを組んで創作活動をするようになった。最初は小さな規模だったが、今では40人ほどのチームに成長した」
チームにはアーティストや建築家、エンジニアなど異なる職業の人々がおり、その専門性を生かし、巨大な作品の制作も可能になったという。
「私の創作活動は単なるソロ歌手によるものではなく、コーラスのようなもの。私の一人の力ではなく、チームのエネルギーと創造性による。チーム全員が最初は到達不可能と思われるような目標に向かって取り組んでいる」
現在、意図的な破壊によって家を失ったパレスチナ自治区ガザといった紛争地の避難民たちを扱った作品を制作中だ。作品を通して「罰せられない犯罪」を表現したいという。
「避難民たちの唯一の所有物は自分の体だけ。その一部である髪を編み込んで家を造ろうと考えている。出入り口もなく、他人の視線や自然の脅威から身を守る壁もなく、同時に中心部は引き裂かれている。最終的に作品がたどり着けるか、その道は不確実だが、私たちは今この困難に立ち向かっている」
■災害から人を守る建築
建築部門 坂 茂氏
今年6月、自らが設計した「下瀬美術館」(広島県大竹市)がユネスコの「世界で最も美しい美術館」に選ばれるなど、手掛けた作品のデザイン性が高く評価されている一方、戦災や災害の救援活動に力を注ぐ、「活動する建築家」としても名高い。