「どれだけ人の思い出に残っていくか」――秋元康と竹内まりやが語るJ-POP、アイドル、創作人生
昭和と令和のアイドルの違いは?
竹内が楽曲を提供した先には、岡田有希子、河合奈保子、広末涼子といったアイドルたちが含まれる。アイドルの移り変わりを二人はどう捉えているのか。 秋元「まりやさんが作る曲には、プロデューサー目線が入っていますよね。『この子がこういう歌を歌ったらいいな』と思いながら書いてる」 竹内「いつもそうですね。その目線はアッキーと近いものがあると思う。もしもあの頃の(広末)涼子ちゃんに曲を書いてくださいというオファーがあったら、アッキーも『MajiでKoiする5秒前』のようなものを書いたんじゃないかな。これまでたくさんのアイドルをプロデュースしてるけれども、審美眼っていうのかな、『この子だ!』と思うのは何が決め手になるんですか?」 秋元「僕は審美眼、全然ないですよ。ファンが見つけて、ファンが育てるんです」 竹内「あ、そうか! 先日、(元乃木坂46の)生田絵梨花さんとコラボさせていただいたんですね。生田さん、表現力があって、声もよくて、ピアノの腕前もあって。最初は大勢のグループの中の一員として見るけど、実はあの中にすごい才能を持った人がそれぞれいるんだなと思った。そういう人たちがアイドルというステップを踏んだ後に自己実現に目覚めていくのは、当然のことですよね」
秋元「僕がAKB時代からやり始めたことは、スターになるまでの可視化なんです。プロダクションがお膳立てするのではなく、うまい人も下手な人も一緒になってがんばるうちにいろんな感情を経験して、自分が本当にやりたいことに気づいていくんです」 竹内「今アイドルになる人は、その先に何か目標があって、アイドルをステップにできるぐらいのメンタリティーだからやっていけるんだと思いますね」 秋元「だけどちょっと寂しいなと思うのは、われわれの時代は、アイドルはいくつになってもアイドルじゃない? 松田聖子さんは還暦をすぎても聖子ちゃんで、アイドルなわけ。今の子たちはいくつぐらいまでって決めてるんですよ。その先は女優になるとかタレントとか、声優とか。そこが今の子たちのドライなところで」 竹内「でも、アイドルを夢見る女の子たち一人ひとりに人生があるわけですよね。若い人の人生を左右することへの責任というか、重いなと思うことはありますか?」 秋元「ありますよ。それを一番プレッシャーに感じます。でも、芸能界を目指すのであれば、この人は主役をつかんだ、この人は3番手だということは、必ずあるわけじゃないですか。スターというのはがんばっても報われないことはあるし、思ってもみないかたちで報われることもある。それを彼女たちが身をもって知ることになるのは残酷だなってつくづく思います。でも少なくとも、確かにこの世界は公平ではないが、汗をかかないと運はやってこないということは言えると思うんですよね」