書道セットから消えた「固形墨」 生産量は最盛期の3%…1400年の伝統「奈良墨」を守るため 七代目の新たな挑戦に密着
■受け継がれる技術
中村さんには後継者がおらず、この技術が途絶えかけていた。 中村雅峯さん:昔は門外不出で『一子相伝』。自分の子どもに伝わっていく。どんどん技術を残していきたいと切り替わって。 門戸を広げたところに、奈良の文化が大好きだという佐藤奈都子さんが弟子入りし、技を未来につなげるため、一から学んでいる。 佐藤奈都子さん:彫刻刀自体、学生時代から触ったことなかったんですけど、消えてしまうものにも美しいものを施そうっていう昔ながらの日本人の心意気みたいなのがすごく素敵だなと思って。 中村雅峯さん:一品一品できていく喜びは、やった者にしか分からない。楽しい。
■松を燃やして作る煤「松煙」が途絶える危機に
墨の原料となる煤(すす)も、深刻な問題に直面している。 松を燃やして作る煤、「松煙」が途絶える危機にあるのだ。 松煙墨は1400年前から続く日本の墨の原点だが、職人は、日本にたった1人。 高齢で後継者もいない。 そこで、墨職人の長野さんが原料の松煙づくりを自分で受け継ごうと奔走している。 設備に必要な資金をクラウドファンディングで募っている。
■「需要を生んでいくのも仕事の一つ」
長野さんは、墨の魅力を広めるため、子どもたちに墨の魅力を伝える活動も行っている。 長野睦さん:まだ物を見たことあるとか、香りを知ってるとか、そういえばあったなといううちに、価値や背景にあるものとか伝えてないから、当然相手も理解できないし、その物の価値が分からなかったら当然買わないじゃないですか。需要を生んでいくのも自分たちの仕事の一つ。
■後継者、材料、そして世の中の需要、どれか一つが欠けると伝統は途絶える
後継者、材料、そして世の中の需要、どれか一つが一瞬でも欠けると伝統は途絶えるのだ。 長野睦さん:全く知らないタイミングで知らないところで全く誰にも知られずに終わっていってるっているものは、こういう業界だとたくさんあるので。1400年間続いてきたものなので、なんとか今の時代で、なくなってしまわないように、ちょっとでも、少しでも、先につなげていけるように。 便利な時代ゆえ、見過ごしてしまう本物の価値。失ったことに気づいた時には手遅れかもしれない。 (関西テレビ「newsランナー」 2024年12月25日放送)
関西テレビ