先行するテスラ、中国新興自動車メーカーに日本、ドイツはどう立ち向かうのか。次世代モビリティの重要キーワード『SDV』とは?
SDVに先鞭をつけて勢いを増す、米中の新興メーカー
では、そのSDVにおける現状はどうなっているのか。 まず、この分野で先鞭をつけたと言われているのが米・テスラだ。同社は様々なユーティリティ向上につながる機能をソフトウェアで追加可能とし、これをサブスクリプション(定額課金)形式で提供することで、販売後も利用料金を得られるビジネスモデルをいち早く確立した。さらにADAS(Advanced Driver-Assistance Systems/先進運転支援システム)をOTAによるソフトウェア更新で利用できることも想定。車両の不具合にも対応し、ユーザーは居ながらにして大半の修理が完了してしまう。テスラがディーラー網をほとんど持たないのもこのビジネスモデルがあるからだ。 そして、そのビジネスモデルを猛追をどころか、それを上回る勢いを見せているのが中国だ。実は中国において新エネルギー車の主役とされていたのはEVだったが、都市部を中心に需要が一巡。航続距離の問題もあって近年はその主役がPHVに移っており、すでに販売台数はEVよりもPHVの方が上回っている状況にある。そうした中で中国メーカーはEVの次に来る次世代車として、経営資源をSDVに集中投下し初めているのだ。 特にこの領域で著しい動きを見せているのが中国のIT系メーカーである。中国の通信大手「華為技術(ファーウェイ)」はBYDとスマート運転協力協定を締結して、自動運転を視野に入れた共同研究に入ったし、中国IT大手の小米(シャオミ)も24年3月に最先端の機能を満載したEV「SU7」をデビューさせ、発売1か月で7万5000台もの予約を獲得した。また、中国では百度(バイドゥ)や騰訊控股(テンセント)などIT大手が、相次いでADASを軸として自動車業界へ参入。これによってクルマの開発そのものが大きく変化しようとしているのだ。
SDVの普及を向けてついに動き出したレガシー自動車メーカー
そんな中でこの領域で後れを取っていると言われ続けてきたのが、これまでハードウェアで先行する開発プロセスを採ってきた日本や欧米のレガシー自動車メーカーだ。しかし、そんなメーカーも、ここへ来てようやく反攻に向かい始めているようだ。 その反攻の狼煙をいち早く上げたのがBMWだ。2023年秋に独・ミュンヘンで開催されたIAAモビリティ2023において「BMWビジョン ノイエ・クラッセ」と呼ばれる電動サルーンの構想を披露。同社の伝統である“駆けぬける歓び”はそのままに、インタラクティブで直感的なデジタル体験をもたらす次世代iDriveまでも導入するとしたのだ。 さらに2024年3月にはそれに続く「ビジョン ノイエクラッセX」を発表。これは2025年下期にも発売を予定する新型「iX3」のコンセプトモデルと予想され、ここには新世代のバッテリーによる充電時間の大幅な短縮、さらにV2Gを見据えた電力源としての機能を持たせるなど、SDVを下支えするEV機能の向上も期待される。 また、フォルクスワーゲンもソフトウェア開発会社であるキャリアドがハーマンと協業してアンドロイドベースのVW OSを採用することを決定。ポルシェとアウディのEVプラットフォームとして展開し、2028年頃には最初のSDVが登場すると発表されている。他にもルノーが26年にSDVを導入するとしており、欧州勢も着々とソフトウェア主体のクルマづくりへとシフトしつつあると見ていいだろう。