大谷がスポーティングニュース最優秀男性アスリートに:国内外記者が振り返る前人未到のシーズン
タイラー・ケプナー氏のコメント
<プロフィール> 野球に関する著書2冊『K: A History of Baseball in 10 Pitches(K: 野球を彩る10種類の球種史)』と『The Grandest Stage: A History of the World Series(最高の舞台:ワールドシリーズの歴史)』を執筆。バンダービルト大学卒業後、約30年にわたり野球を取材。エンゼルスやマリナーズの担当記者としてキャリアをスタートし、その後『ニューヨーク・タイムズ』でメッツとヤンキースを担当。現在は『ジ・アスレチック』でシニアナショナル野球ライターを務める。 <ケプナー氏のコメント> 驚くべきことは、これだけ長い野球の歴史がある中で、今まで見たことのないことをする選手が現れたという点だ。それが本当に信じられない。これまでは選手を「投手」か「打者」のどちらかに分類してきたが、大谷はその両方を兼ね備えている。これがどれだけ可能性を広げるかは計り知れない。再現性があるかどうかは分からないが、少なくともそれが実行可能であることを大谷が証明した。 大谷はどちらの役割でも十分な成績を残しており、それもただの平均的な選手ではなく、どちらの分野でも卓越した成績を誇っている。そして、今年は投げられない状況で、彼は新しい挑戦に取り組み、またしても誰もやったことのないことを成し遂げた。それはまるで「できるか試してみよう」と決意したかのようだった。そして彼はそれをやり遂げ、歴史的なパフォーマンスを見せた。 彼には才能とともに、観客を引きつける劇的な魅力がある。ワールドシリーズでは彼自身の活躍は少なかったが、チームは優勝した。彼は重要な一打を放ち、怪我を抱えながら試合に出場し続けた。彼が毎試合すべて完璧でなかったとしても、重要な場面で輝きを放ち、私たちに記憶に残る瞬間を提供してくれる。 今年のように盗塁を増やしたシーズンが再び訪れるかは分からない。私には今年の盗塁数は一度きりの特別な挑戦だったように思える。彼は身体が非常に大きい。ホセ・カンセコも1シーズンだけ多くの盗塁を記録したが、その後は減少した。アレックス・ロドリゲスも同様で、身体が大きくなるにつれて盗塁数が減少していった。盗塁にはリスクが伴う。今年のワールドシリーズで、大谷は盗塁を試みた際のスライディングで怪我をした。その怪我が6月に起きていたら、チームに与える影響は全く違っていただろう。今後は盗塁のタイミングについて、より戦略的な判断が求められるだろう。 リスクがありつつも、今季の大谷は盗塁を積み重ねた。それは彼の運動能力、意欲、そして投手の癖を見抜く洞察力の高さを示している。彼はほとんど刺されることがなかった。成功率が驚異的だった。たとえば、エリー・デ・ラ・クルーズはメジャー最多の盗塁を記録したが、同時に盗塁失敗数も最多だった。一方、大谷は59盗塁に対し失敗はわずか4回。これがどれだけ驚異的な比率かを物語っている。彼の才能、意志、そして技術の高さを証明している。 スポーツにおいて、注目を集めるスター選手がいることは素晴らしいことだ。ドジャースに移籍したことについて、「金満チームがさらに恵まれた」と不満を持つ人もいるだろう。しかも、彼は契約金を一部減額してチームを助けたため、いっそうそれを受け入れがたいと感じる人もいる。しかし、大谷はナイスガイで、彼を悪役にするのは難しい。ドジャースも資金力があるとはいえ、毎年優勝しているわけではない。 今年の彼のシーズンは、野球界にとって非常に価値あるものだった。現時点で「今日の野球界で最も偉大な選手は誰か」という問いに疑問の余地はない。そして、大谷こそ史上最高の選手だと強く主張することもできる。かつてはそれがベーブ・ルースだと言うのは簡単だった。なぜなら、ウィリー・メイズも投げなかったし、ハンク・アーロンもテッド・ウィリアムズもスタン・ミュージアルも誰一人として投手ではなかったからだ。 それが「もう一つの空」を形成している。そして大谷は、その両方を実現している。