「AIにできない、人に寄り添う管理栄養士を育てたい」 料理雑誌の編集者から大学講師へ
「調理は科学」の言葉に目覚めて
土田講師が、文教大学で学生指導を行うようになって2024年度で4年目。大学院修士課程を修了してから30年以上にわたり、「食」のジャーナリストとして幅広く取材・執筆活動を行ってきました。 「子どもの頃から料理が大好きでしたが、親族の多くが教員だったこともあって、地元・広島大学の教育学部に進学しまして、卒業後は家庭科の先生になるつもりでした。ところが、あるとき調理学の先生の『調理は科学です』という言葉に触れ、調理科学の魅力に目覚めました。調理中に起きる一連の現象を仕組みとして解明できることが面白くてたまらなかったのです」 進路を変更して、お茶の水女子大学の大学院に進学。「加熱による肉の旨味の変化」の研究をしているときに「この面白い調理科学をわかりやすくみんなに伝えることができたら、さらに面白いのではないか」と思うようになり、修士課程を修了する頃にはマスコミ志望に方向転換し、料理専門誌の編集者として社会人生活のスタートを切りました。 「雑誌を作る中で、プロの料理人の仕事ぶりに触れる機会が増えてきたら、今度はプロの技を文章で表すことに非常に興味を持つようになりました。出版社を辞めて食専門のフリーランスの記者として、食をめぐるさまざまなテーマを追うことになりました」 料理のコツを科学で解き明かす、プロの料理人の技に写真と文章で迫る、生産地へ足を運び生産者の思いをすくい上げる……。「食」を多角的にとらえた旺盛な取材・執筆活動は、何冊もの書籍になりました。 そして「伝える」ことから「教える」ことへと仕事の軸足を移します。 「教育学部出身なので、私が考えてきたことや、取り組んできたことを学生に教えるチャンスがあればやってみたいという気持ちは以前からありましたし、いくつかの大学では非常勤で講義を受け持ってもいました。そうした活動を続けるなかで、じっくり4年間という長さで学生たちとかかわり、ディスカッションしながら共に学ぶこともいいかもしれないと考えるようになりました。食べるものを調理するというのは人間にしかできませんし、調理しておいしくして食べるのはとても人間らしいことです。そう考えたら、『調理学』ほど私にすっと入ってくる学問はありませんでした。それを学生に教えていく、研究を続けてこの分野で成果を上げていくことをやっていきたいと思いました」