「AIにできない、人に寄り添う管理栄養士を育てたい」 料理雑誌の編集者から大学講師へ
栄養と食のスペシャリストとして、病院や学校、食品メーカーなどで栄養管理や指導を行うのが、管理栄養士です。文教大学健康栄養学部管理栄養学科で調理学を担当する土田美登世講師は、調理が持つ文化的な側面や科学的な裏付けに触れながら、多角的に「食」をとらえる授業を行っています。学生一人ひとりに「管理栄養士プラスアルファの強みを身につけてほしい」と話す土田講師の取り組みを紹介します。(写真=本人提供) 【写真】編集者時代は徹夜もなんのその。夢中で雑誌を作っていた
AIにできないことは?
管理栄養士を目指して入学してきたばかりの1年生が並ぶ調理学の教室で、土田講師はチャットGPTを使った栄養指導を紹介します。 「チャットGPTに『貧血気味のときに何を食べたらいい?』と聞けば、ものの数秒でメニューが出てきます。それを学生に示しながら、管理栄養士を目指して勉強すれば、皆さんも4年後にはこれができるようになるけれど、それだけだとAIに負けてしまう。AIにはできないことも同時に学び、身につけてほしいと話しています」 栄養のバランスが取れた献立の作成ならAIの得意とするところです。しかし、食べる人の嗜好(しこう)やその日の気分にまで配慮した献立づくりは、まだ人間にしかできません。 「AIがどんどん入ってくるこれからの時代に、問われるのは管理栄養士として人に寄り添った提案ができるかどうかです。そのためには、栄養を元素や成分から記号的にとらえるのではなく、その背景にあるものにも興味を持って学び、人としての経験値をあげていくことが必要なのではないでしょうか」 土田講師が担当するのは、調理学と調理学実習です。学生たちは栄養のバランスが取れたものをいかにおいしく食べるか、そのためにどう調理するかという調理の基本を学びます。授業のなかでは、その料理の文化的な背景をひもといたり、調理のコツの科学的根拠を検証したりと、さまざまな切り口で「食」にアプローチします。 「私は『管理栄養士プラスアルファ』と言っているのですが、このプラスアルファの部分が、管理栄養士としての強みにもなります。『食』を多角的にとらえることを通して、自分にとってのプラスアルファを見つけてくれたらいいなと思います」