クルマが知能化するってどういうこと? 「Honda 0」が提案する新しい人とクルマの関係
ホンダが提供しようとする新しい“デジタルUX”
クルマが知能化するとはどういうことなのか? SDV(ソフトウエア・ディファインド・ビークル)とやらになり、より高度なECUが積まれ、今まで以上に綿密なかたちで世間とつながるようになったら、何が起きるのか? 浅学な記者にはよくわからないが、それはガラケーがスマホに変わったときのように、景色を変えていくのでしょう。 【写真】革新技術を赤裸々に大公開! 技術展示を含む「Honda 0 Tech MTG 2024」のより詳しい写真はこちら(22枚) なーんて書くと、どうせまたSNSとかで「そんなクルマはいらん」だの「自動車メーカーがやることじゃない」だの言われるのだろうが、そういう人たちにしたって、スマホでポチポチ文句を打ち込んでいるんだから、けなげというかいじましいというか(笑)。まぁ、世の進化というやつは総じてそういうものなのだ。賛成も反対も全部巻き込んで、いや応なく突き進んでいく。 ときは2024年10月4日、場所は本田技術研究所の四輪R&Dセンター(栃木)。記者は、ホンダの次世代電気自動車(EV)「Honda(ホンダ)0」シリーズの技術取材会、その名も「Honda 0 Tech MTG 2024」に参加した。そこでは、ドライビングダイナミクスに関する解説や試作車の試乗、生産技術の見学なども実施されたのだが、そちらについては過日の渡辺敏史氏のリポートにお任せしたい。ここでは、読者諸氏が興味なさそうな(笑)デジタルテクノロジーと、それでホンダが提供しようとしている顧客の体験について考えてみたいと思う。世にいうデジタルUX(ユーザーエクスペリエンス)というやつだ。 当日の説明によると、ホンダ0のデジタルUXは、「移動時のストレスを最小化、車内空間の楽しさを最大化する」ことを目的としているそうな。では具体的に、彼らはどんな機能の搭載を想定しているのか? そのイメージをつかむうえでも、今回は当日解説やデモンストレーションがあった、いくつかの具体例を見ていきたい。
まるで気の利くショーファーさんのよう
ホンダがUXの一例としてまず挙げたのは、「ドアの自動オープン」というものだった。……「そのくらい自分でやるわ」という皆さまの声が聞こえてきそうだが(笑)、いや待たれい。これが結構、地味にスゴいのである。 あらためて、この機能は「オーナーが近づくとクルマのドアが自動で開く」というものだが、ただ漫然とドアが開くだけではない。まずは車載カメラが、自車に近づく物体を知覚。それが人か、メモリーに登録されているオーナー(やその家族)か否かを識別する。そこで「オーナーだな」となった場合、次には顔の向きなどから、その人物が「クルマに乗り込もうとしているか否か」を判断。これらの段階を経て、「オーナーが自車に乗り込もうとして近づいてきた」との結論に至った場合のみ、ドアを開けるのだ。 これだけでもずいぶん複雑なことをやっているわけだが、同システムの状況認知や判断、行動はさらに高度で、例えばオーナーが大荷物を持っている場合は、運転席のドアではなくテールゲートを開ける。赤ちゃんがいる場合は、チャイルドシートのついた後席のドアを開ける……といったことまでやってのけるのだ。また自車周辺に障害物がある場合はドアは開かないので、ドアパンチして自分も周りも傷つけるなんて愚行は犯さない。まさに気の利くショーファーさんのような機能なのだ。さすがに運転まではしてくれないけど。 ……いや待て。ホンダ0は確か、“運転”もしてくれるな。さすがに完全自動運転とまではいかないが、一般道を含む広範なシーンで稼働するというレベル3(アイズオフ)の自動運転システムが、ドライバーをアシストするというのだ。さらに移動中には、AIを活用した音声アシスタントによる高度なサポート機能も供されるという。ここでも活躍するのは、車内の状況を読み解いて適切な提案につなげる、認知・判断・行動の技術である。