とにかく目下に「ご苦労さま」、メールでは「お世話になっております」じゃ思考停止?グッと好印象になる<使い分け>を伝授
◆「とんでもありません」 「とんでもございません」条件反射で使うのは、流されすぎです 『「とんでもない」は一語化した形容詞で切り離すことはできず、「とんでもございません」と使うことは本来できない。 「とんでもないことでございます」とすべきである。しかし、慣用化により「とんでもございません」「とんでもありません」は定着している』 現在、「とんでもございません」について、このような認識が一般的です。 「とんでもございません」ではなく「とんでもないことでございます」が正しい。 しかし、それでは冗長な印象を与えるために、慣用的な表現として「とんでもありません」「とんでもございません」が許容されつつあるわけですね。 (言葉に関する書籍には、完全に一語化した形容詞であることに疑問を呈しているものもあります。注目に値する考え方だと思いますが、ここでは置いておきます) ひとつ抵抗しておくと、「とんでもない」をひとまとまりの形容詞とみなすなら「いえ、とんでもない」とそのまま使うこともできます。 言い切りが落ち着かないと感じた」ら、「いえ、とんでもない。そんなことはございません」ともう一文加えるのも手。 「滅相(めっそう)もない。お恥ずかしいです」と同じ形です。 誤用でも冗長でもなく、敬意も表せるのではないでしょうか。
◆謙遜しつつも否定する?!「とんでもない」の使い方 話を戻して、今や「とんでもないことでございます」「とんでもございません」は、褒め言葉を軽く打ち消す返事として大勢を占めます。 しかし、「とんでもない」という言葉の正確な意味を把握した上で使うのでなければ、流されすぎだと言えるでしょう。 一つ目に「程度や常識を超えている」という意味があります。「とんでもない悪人だ」「とんでもない円安だ」のように、マイナスの意味で使われます。 二つ目に「相手や他人の考えを強く否定して言う」」という意味があります。「滅相もない」と同じです。 「今になって断るとはとんでもない」のように、も使われます。 「とんでもないことでございます」「とんでもございません」と使う場合は、二つ目の意味です。 両方とも、謙遜しつつも否定するという働きは変わらないわけですね。 こうなると、せっかく褒めてくれた相手の言葉を強く打ち消すということ自体が、相手を尊重する敬語の本質とずれているように感じられます。 それが、本当に思いがけないほど過分な褒めや申し出や贈答であったなら、「とんでもございません」はすんなり受け止められるでしょう。 しかし、条件反射で単なる儀礼的な決まり文句として使ったなら、心ある相手にはそれが伝わってしまうでしょう。 ※本稿は『その敬語、盛りすぎです!』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
前田めぐる