【“親がしんどい”一問一答】「結婚すべき」「子どもを産むべき」と価値観を押しつけられたら
親との会話のなかで生まれたモヤモヤはどうやって解消したらいいのでしょうか。『「親がしんどい」を解きほぐす』(KADOKAWA)の著者であり、臨床心理士・公認心理師の寝子さんにアドバイスをいただきました。 【画像】“親がしんどい”お悩み相談
「結婚すべき」「子どもを産むべき」と価値観を押しつけてくる。自分の人生に干渉されたくない
【お悩み】「一生独身はやめて」「結婚式は絶対に挙げるべき」「子どもは産むべき」など、結婚や出産に対する考えを押しつけてきます。自分の人生は自分で決断したいと親に伝えたいのですが、どのように伝えるのがいいのでしょうか? 【回答】家以外の場所で気持ちをストレートに伝える。それでも変わらない場合は、物理的に「バウンダリー」を引いて 寝子さん: この場合は、「あなたが言いたいことはよくわかるけど、自分の人生は自分で決めます」とストレートに言っていいのではないでしょうか。こういう大切な話をするときは、家以外の場所で行うことがコツです。家だと互いに安心感があり、相手との距離が掴みにくくなって、言い争いに転じる可能性があるからです。もしその場でハッキリ言えない場合は、気持ちを整理して、電話やメールで伝えるのも、お互いが冷静に気持ちを伝えるには、いい方法です。 親自身、それが口癖のようになっていて、子どもにどれだけ不快な思いをさせているか自覚していない可能性もあるんです。冷静に気持ちを伝えてもまた同じようなことを言ってきた場合は、「やめてほしいと言ったのにその気持ちを無視して何度も同じことを言うのなら、しばらくは会うことをやめましょう」と言って、物理的に会う頻度を減らすのもいいかもしれません。 言葉で伝えることに加えて、電話に出ない、メールの返信を遅らせるなど、態度で示すのも効果があるかもしれません。「あれ、いつもと違うぞ」と気づいてもらうことで、バウンダリー(境界線)を作ることになり、「子どもの人生に口を出しすぎた」と親が自覚するきっかけになります。
安定した職業を望む親に、それ以外の働き方を理解してもらうには?
【お悩み】安定した職業からの転職を決めたとき、親に猛反対を受けました。正社員に対する信頼度が高すぎる母と、働き方や資格の有無で生活の質は測れないと思う私。今の時代の働き方をどう親にわかってもらえばいいでしょうか。 【回答】時間をかけて、自立した自分を見せることが説得力に 寝子さん: 「自分の人生は自分で決めていい」ということを大前提に、このことを本質的に親に理解してもらうには、時間をかけるしかないかもしれません。50代~60代の親世代は、特に仕事については画一化された価値観の中で“世間の常識”を盲信している方もいらっしゃり、こちらが必死に伝えても、実感がないが故に理解できないことも。 この場合は、自分が新しい働き方を実践し、「私は正社員でなくてもこうしてしっかり生きているから大丈夫だよ」と示すことが親を安心させる一番の材料になると思います。そもそも不安なのは親よりも子ども本人のはずですよね。自分の人生は自分のもの。何よりも、「私は大丈夫」と強く信じてください。 >臨床心理士・公認心理師の寝子さんに聞く「親とわかり合えないのはなぜ?」に続く 臨床心理士・公認心理師 寝子 スクールカウンセラーや私設相談室カウンセラーなどを経て、現在は医療機関で成人のトラウマケアに特化した個別カウンセリングに従事。トラウマの中でも、親子関係からのトラウマケアと性犯罪被害者支援がライフワーク。臨床業務の傍らXで心理に関する発信や、ブログ「心理カウンセラー寝子の寝言」も人気。著書に『「親がしんどい」を解きほぐす』(KADOKAWA)がある。 取材・文/浦本真梨子 イラスト/kyoko 企画/種谷美波(yoi)