【103万円の壁】引き上げで実は会社員などにもメリット...国民民主党案では年収が低い人の方が“減税の割合”が高い!? 政府試算『税収約7兆6000億円減少』をどう見る?
衆院選で過半数割れとなった与党に対し、4倍増の28議席獲得と大躍進を見せた国民民主党。「手取りを増やす」政策を訴え、なかでも年収「103万円の壁」を178万円に引き上げる案に強い意欲を見せています。 【画像を見る】年収500万円の人は「13.2万円」「2.6%」 年収別に減税額・減税率の試算をチェック この「103万円の壁」が引き上げられた場合、どんなメリットがあるのでしょうか?そして、本当に国民民主党の訴えは現実となるのでしょうか?ジャーナリストの武田一顕さんの意見を交えながら情報をまとめました。
働きたいけれど働けない…そもそも「103万円の壁」とは?
「103万円の壁」とは、所得税が課税される“ボーダーライン”のことです。年収が、基礎控除の48万円と給与所得控除の55万円の合計103万円を超えると、超えた分に所得税が課税されます。 ▼年収103万円以下:所得税が課税されない ▼年収103万円超え:超えた金額に所得税が課税 さらに、誰か(親など)の扶養親族である場合、年収が103万円を超えると税制上の扶養から外れます。扶養控除に影響するため、アルバイトの学生や週2~3回パートタイムで働く人たちは、103万円を超えないように勤務を調整することがあります。「103万円を超えると親の手取りが減るから、『超えないで』と親から言われている」という学生もいるでしょう。 また、12月になると103万円を超えないよう調整するアルバイト・パート従業員が増えるため、「シフトが埋まらない」と頭を悩ませている店舗もあるでしょう。現状では、店側は「年末は人手がほしい」、学生側は「働きたいけれど、働けない」という状態になっています。
「壁」崩壊は会社員・自営業にもメリットが!
「103万円の壁」が引き上げられた場合、影響を受けるのはアルバイト・パート従業員だけではありません。普段この「壁」を意識していない給与所得者(会社員など)も、基礎控除・給与所得控除が増えるため、納める税金が減ることになります。 例えば年収400万円の場合、現在は「400万円-103万円」が所得税の対象となりますが、仮にこの「103万円」が引き上げられると、所得税の対象金額が減るため、支払う税金も減ることになります。給料制でない自営業者の場合、給与所得控除は関係ありませんが、基礎控除が増えるため、支払う税金が減ることになります。 この「103万円の壁」を「178万円」に引き上げようと提案しているのが国民民主党。玉木雄一郎代表は「103万円の壁を引き上げて、もっと働けるように、もっと稼げるようにしたい」と主張しています。国民民主党の党本部によりますと、控除の内訳は未定で(11月1日時点)、今後議論を重ねていくということです。 では、この「178万円」はどこから捻出された数字なのでしょうか。「103万円の壁」ができたのは1995年でした。当時の日本の最低賃金は全国平均で611円。そこから約30年経ち、現在の最低賃金は「1.73倍」の1055円となっています。一方で「壁」は103万円のまま変わっていません。 例えば、時給制のアルバイトとして働いた場合、同じ時間働いたとしても、30年前より今の方が多く稼げることになります。ただ、「壁」が103万円のままなので、「働きたいのに、働けない」「働く時間を短くするしかない」状態になっています。そこで、最低賃金が「1.73倍」になった分、「壁」である103万円も「1.73倍」にして、「103万円×1.73=178万円」にしようと国民民主党が主張しています。