遅刻=ルーズとは限らない? 遅刻しやすい子が直面している「乗り越えられない壁」
朝に「喜び」をつくることなどがおすすめ
はるか:そうそう。そこでまず、明日からできる方法として、小児科専門医の成田奈緒子先生(※3)が紹介されていた、朝に喜びをつくる方法を紹介したいと思います。さっきの二つめの原因を逆手に取ると、興味関心の高いことではドーパミンが分泌されやすかったりするんだよね。だから、その特性を利用して、たとえば子どもの好きな音楽や動画、おもちゃと共に起こすとか、そういう楽しみを用意して朝を迎えるんです。 ひとし:なんかクリスマスのプレゼントがあるから早起きしちゃうのと似てるかも(笑)。 はるか:たしかに! 毎朝プレゼントを用意するみたいな感じかも。 実際、最近個別相談を受けてる中学3年生の子をもつ親御さんに、この方法を紹介したんですよ。中3だとおもちゃとかはもう使えないので、お子さんご自身に「何がいい?」と聞いてみたら「朝ごはんがテンション上がるものだったらいいかも」と。それで「明日は一緒に朝ごはんを買いに行こう」と決めたら、次の日は起きられて、朝ごはんを一緒に食べたんだそうです。それ以来、このやり方がすごくうまくいってるみたいで、「週5日も起きられました!」と喜びのメッセージをもらいました。 ひとし:すごいね、本当に効果あるんだ! はるか:そうなんよ! もう俺もめちゃくちゃうれしくて! でも、もちろん中には、これだけじゃ改善が難しい子もいると思います。最初はいいけどなかなか続かなかったり。 ひとし:そういう人はどうしたらいいの? はるか:「トークンシステム(※4)」という方法がおすすめです。トークンっていうのは、ポイントのようなもの。たまったら何かと交換できますよ、という仕組みです。学校ではよくシールを使っていました。 ひとし:なんかラジオ体操のスタンプみたいだね。 はるか:まさにそう! たとえばこの娘さんだったら、まず「朝遅刻せずに登校しよう」という目標を立てる。それが達成できたら、一つシールをもらえる。そしてシールが10個たまったら、大きなシールがもらえるようにする。大きなシールが三つたまったら、何か好きなことをしようね、とかって楽しみをつくるんです。 ひとし:なるほどね、その楽しみも一緒に決めるのがいいの? はるか:そうそう。「〇〇にお出かけしよう」とか「カードを一緒にやろう」とか、その子にとっての楽しみをつくるのが大事です。 子どもは、シールをもらえるってだけでもモチベーションが上がるし、「大きいシールをもらう」「〇〇に行く」と目標が明確に可視化されると、よりやる気を出してくれます。親御さんにとっても「今日、目標クリアできたね」という励ましにプラスして、「こんなにシールたまったね!」とか、毎日お子さんの成長を認める時間を持てたり、コンプリメント(褒め言葉)を増やして継続できるって良さがあるんだよね。 ひとし:たしかに楽しく続けられそうかも。でも、これってちょっと報酬で動いてる感じがしない? 子どもの心は変わってないっていうか……。 はるか:そうそう、最初はね。でも、今回のように「まずは行動を整える」ことが大事になる場面もたくさんあると思うんです。「できた」という成功体験が積み重なることで、自信もつくし、生活リズムも整っていく。そうして「時間を守ったらこんな良いことがある」と実感していくことで、子どもも時間を守ることの大切さを本当の意味で理解していけるはずです。 ひとし:なるほど、行動を変えることを通して、心を変えていこうってことか。たしかに、俺も部活で半ば無理やり挨拶がんばるようになったら、先生から「君いいね!?」って褒められるようになって、挨拶大事なんだなって学んだ気がする。 はるか:そうそう! 子どもの心に働きかけるのはすごく大事だけど、行動をコントロールできるようにサポートしてあげることも大事。心へのアプローチと行動へのアプローチは、子育てや教育における両輪なので、どちらも大切にしていきたいよね。 ※3 成田奈緒子:小児科専門医。臨床医、研究者として活動しながら、さまざまな知見を融合した新しい子育て理論を展開している。2014年より子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表。参考文献『「発達障害」と間違われる子どもたち』(成田奈緒子著、青春出版社) ※4 トークンシステム:トークンと呼ばれる報酬を活用して、子どもたちの望ましい行動を強化する行動療法。療育の現場や、通常の学級運営などで広く取り入れられている。
はるか先生のワンポイント
遅刻せずに済むように、「楽しみ」をつくってあげよう! ポイントと報酬の「トークンシステム」で、モチベーションを高めてあげるのも一つ。
福田遼,秋山仁志(子育てのラジオ「Teacher Teacher」MC)