能登の復旧阻む「断水」 過去より目立つ“遅れ” 宿泊も再開できず…入れぬボランティア【武居信介の防災学】
■迫る巨大地震の可能性 全国の水道は大丈夫?
地震大国日本ではいつ次の大きな地震が発生してもおかしくありません。果たして地震発生時に全国の水道は大丈夫なのでしょうか? 水道の地震対策としては、主要な管路を「耐震管」に整備することがあげられます。「耐震管」とは、地震が起きても水道管の継ぎ目の接合部分が離脱しないようになっており、災害時でも水が漏れてしまう箇所が少なくなり復旧作業はかなりスピードアップされるといいます。 しかし、全国の水道事業者が参加する日本水道協会がまとめた令和3年度の水道統計によると、全水道管の耐震化率は全国平均で、19.0%にすぎません。 巨大地震が想定されている地域を都道府県別にみると東京都が47.0%、静岡県が22.0%、愛知県は23.3%、三重県は13.3%、和歌山県が20.5%、徳島県は15.2%、高知県12.1%、大分県と宮崎県12.9%と、東京以外では能登地方と同様に耐震化が進んでいないことがわかります。
■100%の耐震化「いまや非現実的」 まずは30%の達成を…
能登半島地震の国交省の上下水道の対策検討委員会の委員でもある名古屋大学の平山修久・准教授によると、「耐震化の全国の状況はかなりまずい状況だ。南海トラフの地震が今起きると能登と同じような状況が各地で起きることになるだろう。半島などの地域では、同じように救援部隊が入れずに長期間にわたって復旧ができないことも想定される。少なくとも水道管路全体の耐震化率を30%までは進めておくことが必要だ。耐震化率が30%あれば、ある程度の被害にとどめることができる可能性がある」と指摘します。 さらに、耐震化を進めるには専門の技術者による設計や施工管理などが重要ですが、水道技術者の不足も指摘されています。全国の水道の技術職員は、1990年には2万5858人いましたが、2021年には2万661人と約2割も減少しています。 また、費用面での課題もあります。日本の人口が減少しつつあるため、今の水道施設をそのまま維持するには水道料金の値上げが必要となってくるのが現状です。そこに水道管の耐震化の経費を上乗せしていくことは、利用者の理解を得るのがなかなか難しいといいます。 平山准教授はさらに、「耐震化だけでなく、老朽化した管路が放置されている問題もある。全国の全管路の22.1%が法定耐用年数を超えてしまっているのが現状だ。水道事業の経営の状況や技術者の確保の難しさなどから“100%の耐震化”は、いまや非現実的だ。とはいえ、せめて巨大地震が起きる前に耐震化率30%を達成しておかないと、日本は厳しい状況に置かれることになる」と話します。