能登の復旧阻む「断水」 過去より目立つ“遅れ” 宿泊も再開できず…入れぬボランティア【武居信介の防災学】
■水が出ないため応援も自由に入れず…
現地で支援活動やボランティアをする人にとっても、能登半島でインフラの機能停止が、現地に入っての活動に大きな制限が生じる結果となりました。 能登では、断水に加えトイレもなかなか復旧しないことなどから、宿泊施設は全くと言って機能しませんでした。救援に入る人たちは能登に泊まって活動することができないままに時間が経過してしまったのです。 過去の全国の災害では、被災エリアの比較的近くにインフラが影響を受けていない地域があったことから、そこに宿泊して活動ができたケースが多かったのですが、能登半島地震では大半の人が遠く離れた金沢市周辺のホテルなどに宿泊して毎日車で現地に通うこととなりました。金沢付近からの往復により毎日長時間の移動が必要となるので、現地での活動の稼働時間が大幅に減少する結果となって復旧作業などの遅延につながりました。
■水道の復旧…なぜ厳しい状況にあるのか
水道の復旧は、なぜここまで遅くなってしまったのでしょうか。 応援で珠洲市と七尾市で水道の復旧にあたっている名古屋市上下水道局の担当者によると、復旧が難しい点としてまずは応援に入るための道路や宿泊場所の確保などの問題があったといいます。それに加え、今回の地震では浄水場や配水池も大きく被災してしまった点も大きかったといいます。近年に日本で起きた地震では、浄水場がここまで被災するケースはなく、浄水施設を一から復旧し直していく必要がありました。 さらに、浄水場を復旧させていっても、配水池に水を送る送水管やそこから各地域まで水を送る配水管でも水漏れを起こす被災箇所が次々に判明していきます。水を通すためには少しずつ水道管に水を流してみて、水漏れを起こしている箇所を探しては修理する作業を繰り返す必要があり、この繰り返し作業がかなりの時間を要したということです。 この背景には、能登地方の水道管の耐震化が進んでいなかったことが挙げられます。市町村ごとの水道管全体の耐震化率は、輪島市が7.4%、珠洲市が19.1%、七尾市が4.9%となっていました。耐震化が進んでいれば、ここまで修理に手間取らなくてもよかった可能性があるといいます。