能登の復旧阻む「断水」 過去より目立つ“遅れ” 宿泊も再開できず…入れぬボランティア【武居信介の防災学】
2024年元日に発生した能登半島地震から3か月あまり経ってもインフラの復旧がなかなか進まず、水道に関しては3月末の時点でも約7860戸で断水が続いており、被災者の生活に大きな影響を及ぼしています。東日本大震災の際には約3週間で水道は復旧。熊本地震では約1週間で一部の困難な箇所だけを除いて断水がおおむね解消したことと比較すると、能登での復旧の遅れが目立っています。 電力の復旧でも、能登ではほぼ復旧するまでにおおむね1か月かかりましたが、熊本地震では本震から約5日後には停電が解消していました。なぜ、このように能登半島地震ではインフラの復旧が遅くなったのでしょうか。
■迂回路もほとんどなく… 救援・復旧の車両も動けず
元日に発生した能登半島地震はマグニチュードが7.6と非常に大きく、阪神・淡路大震災の2倍以上のエネルギーが放出されたことから、道路や電気・水道といったインフラの被害は甚大なものでした。特に道路の損壊は大きく、斜面崩壊、地すべりなどが多数発生しました。 もともと半島で道路が少なく、迂(う)回路がほとんどない地域だったため、車での移動が極端に制限されることになったのです。このため、救援や復旧の作業のための車両も自由に動くことができず、現地での早い時期の救援活動が停滞する結果となりました。
■水道に何が起きた? 復旧が遅い理由とは…
そしてインフラの中でもとくに復旧が遅くなったのが水道です。 地図の「赤い部分」は地震発生から3か月が経過した4月1日現在で断水が続いている地域。「薄い青の部分」は、まだ一部しか通水ができていない地域です。特に珠洲市の復旧状況が遅く、3月末の段階で市内のほぼ全域に達する約4250戸で依然として断水が続いています。 断水によって被災住民は、“水が飲めない”、“食事を作れない”、“トイレを流せない”、“お風呂に入れない”、“被災家屋などの片づけをするにも水で流すことができない”といった状況が続きました。さらに、断水の影響は病院でも深刻な事態となります。水が自由に使えないと衛生面での管理が厳しくなるうえ、人工透析をするには大量の水が必要で、こうした治療も被災地ではできなくなってしまうのです。