頑固一徹オヤジのようなこだわりを持つマツダの新フラッグシップ、CX-80にエンジン編集部のムラカミが試乗!
希少な後輪駆動ベースの4WD!
マツダが満を持してデビューさせた新フラッグシップ、CX-80の試乗会が、四国・徳島から淡路島を通って神戸までを往復するルートで開かれた。果たして、その乗り味はどうだったのか。エンジン編集部のムラカミがリポートする。 【写真34枚】マツダの新しいフラッグシップ、CX-80の質感の高い室内は必見 詳細画像はコチラ ◆静かな室内 マツダの新フラッグシップ、CX-80の試乗会は、徳島阿波おどり空港を起点に、まずはプレゼンテーション会場までの後席試乗から始まった。最初にくじ引きをして、私に割り当てられたのは、直4ガソリン+電気モーターのPHEV、直6ディーゼル+電気モーターのマイルド・ハイブリッド、直6ディーゼルのみのベース・モデルという大きく3つのパワートレインがあるうちのベースのXD。XDにだけは後輪駆動モデルもあるが、試乗車はすべて4駆で、私が引いたのは6人乗りのエクスクルーシブ・モードという豪華な内装を持つ1台だった。 その2列目のゆったりとしたレザー・シートにお尻をどっかりと下ろし、クルマが動き始めて、まず印象的だったのは、動き出しのスムーズさと室内の静かさだった。発進時にディーゼル・エンジンのゴロゴロという音がまったくしないのはもちろん、高速道路に入り、速度を上げていってもロード・ノイズや風切り音などの不快な音はまったく聞えてこない。隣のカメラマンと普通に話ができるのは当然としても、運転席に座るマツダのエンジニアとも、まったく身体を乗り出すことなく会話ができるのだから、かなりの静粛性の高さと言っていいだろう。 乗り心地も悪くなかった。魔法の絨毯の上を行くような振動ひとつないものではなく、むしろ、どちらかと言えば操縦性重視のちょっと硬めの脚だけれど、路面の荒れに対してしっかりと動いて、衝撃をいなしているのがわかる。だから、後席にいてもクルマとの一体感があり、決して不快ではない。さらに、試乗車にはオプションのガラス・サンルーフがついていたから開放感も抜群で、これなら3列目の住人になったとしても、閉塞感にとらわれることはないだろうと思った。 ◆縦置きエンジン後輪駆動ベース プレゼンの後、同じクルマの今度は運転席に乗り込んで、鳴門大橋を渡り、淡路島を縦断して神戸を目指す。自分でステアリングを握っても、まず感じたのは動き出しのスムーズさと静粛性、それに加えて、ボディの大きさをまったく意識しないで走れてしまうことに驚いた。なにしろ、フラッグシップだけあって、全長が4990mmで全幅が1890mm、ホイールベースが3120mmという立派な体格をしているのだ。にもかかわらず、大きさを感じさせないのは、ドライバーの操作に対してクルマがそのまま素直に動いてくれることからくる一体感によるものだろう。 重量が2トン以上あることもあって、ノーマル・モードで走っているとかなり重厚な乗り味のクルマだと感じたが、スポーツに切り換えると操舵感も軽く動きも機敏になって、俄然、軽快感が増してくる。だが、脚の硬さを調整する機構が付いているわけではなく、あくまで操作に対する応答性の味つけを変えているだけなのだという。それでこんなに軽快感が出せるのは、そもそものクルマのバランスがいいからなのだろう。 真横から撮った写真を見て欲しい。今どきのSUVで、前輪とドアの間にこんなに長いスペースがあるのは珍しい。それはほとんどのクルマが横置きエンジンの前輪駆動ベースの4WDだからだ。しかし、マツダはあえて直6エンジンをフロント・ミドシップに縦置きする後輪駆動ベースのプラットフォームを選択した。その方が物理学的に言って間違いなく前後左右の動きに対してバランスが良く、操縦性が素直なものになる点を何よりも重視したからだろう。今回は試乗できなかったが、後輪駆動モデルに乗れば、操縦性の良さがもっとハッキリするに違いない。 こんな頑固一徹オヤジのようなこだわりを持ち続ける量産車メーカーは、世界広しといえども、もはやマツダしかないのではないか。静粛性についても尋ねたところ、コストをかけてでも徹底的に遮音材を増やして静粛性を確保し、その上で直6ディーゼルのいい音だけをサンプリングして電子的に作ったサウンドをスピーカーから流しているのだという。なるほど、ゴロゴロ音が聞こえないのはそういうわけだったのか、と口にしたら、いや、直6ディーゼルはバランスがいいから、なかなかいい音がしますよ、と返されてしまった。 マツダの頑固一徹、恐るべし、だ。 文=村上 政 写真=望月浩彦 ■マツダCX-80XD Exclusive Mode(サンルーフ装着車) 駆動方式 フロント縦置きエンジン4WD 全長×全幅×全高 4990×1890×1710mm ホイールベース 3120mm 車両重量(車検証) 2070kg(前軸1110kg、後軸960kg) エンジン形式 直6DOHC直噴ターボ・ディーゼル 排気量 3283cc ボア×ストローク 86.0×94.2mm 最高出力 231ps/4000-4200rpm 最大トルク 500Nm/1500-3000rpm トランスミッション 多板クラッチ式8段AT サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル サスペンション(後) マルチリンク/コイル ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク タイヤ (前後) 235/50R20 車両本体価格(税込み) 545万500円 (ENGINE2024年12月号)
ENGINE編集部
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