トップダウン型の組織を見直した米菓メーカー 従業員の案から生まれた「サステイナブルおかき」
東京都板橋区の中央軒煎餅は1923年創業の米菓メーカーです。米国公認会計士から転身した4代目社長の山田宗(しゅう)さん(42)は、米菓が若年層に選ばれないという課題に向き合うため、30~40代女性向けのおかきブランドを立ち上げ、販路を量販店から都心の商業施設などに広げました。トップダウン型の組織も見直し、社員の発想を尊重する風土作りや働き方改革にも注力。社員のアイデアから、フードロスにつながる「サステイナブルおかき」も生まれました。 【図解】世代交代の時が狙い目なリブランディング ポイントや具体例は
定番から新しい楽しみ方まで
中央軒煎餅は東京都と埼玉県に直営店、埼玉県には二つの工場を構え、全国の百貨店や駅ビル、スーパー、オンラインモールなどに販路を持ちます。 商品はおかきを中心に大きく二つのブランドで展開しています。一つは社名と同じ「中央軒煎餅」です。発売19年で累計200万箱を突破した看板商品「花色しおん」のほか、伝統的な味わいの「いねの音色」など、およそ6種類をそろえています。 もう一つは、おかきの新しい楽しみ方を提案するブランド「きりのさか」です。焼いた玄米生地にドライフルーツやナッツなどをあしらった「RICE PALETTE」(ライスパレット)や、サルサソースなどがセットの「ディップするおかき」などがあります。2022年には東京駅構内のグランスタ東京に「きりのさか」の常設店をオープンしました。 従業員は約200人。商品アイテムは約50種類で、最終製品として年間約200万個を販売しています。
米国公認会計士から転身
中央軒煎餅は1923年、山田さんの曽祖父が東京都荒川区で創業しました。その後、本家は社名を赤坂中央軒に変更。1963年、祖父の山田宗一さんがのれん分けの形で「中央軒煎餅」として板橋区で独立しました。赤坂中央軒は2002年に廃業し、創業からの歴史は中央軒煎餅が引き継いでいます。 創業から数えて4代目の山田さんは、祖父から「大きくなったら継ぐんだぞ」と言われていたそうです。当時は社員旅行なども多く、幼心に従業員への愛着が芽生えたといいます。 山田さんは経営者になる夢を持ち、大学在学中に米国公認会計士(USCPA)試験に合格。卒業後、日本の監査法人などを経て米国の会計事務所で2年働きました。「渡米し、日系企業をメインに仕事するようになるとありがたがられました。これからは数字だけでなく実体があるものに取り組み、人に喜ばれる仕事をしたいと思うようになりました」 会計知識やキャリアは、今も経営計画や目標を定めたり、財務状況を把握したりするのに役立っているといいます。