トップダウン型の組織を見直した米菓メーカー 従業員の案から生まれた「サステイナブルおかき」
ミッション策定で社風に変化
山田さんが同時期に取り組んだのが、自社のミッション、ビジョン、バリューのアップデートです。それまでのミッションは「最高の米菓子を提供することで顧客満足を得る」というようなもの。表現が硬く、従業員から深い共感を得られていないのではと感じていたそうです。 「中央軒煎餅を社会に真に役立つ企業にしていきたい。その思いを従業員全員で形にするためにアップデートしました」 そして創業100年を前にして、ミッションを「100℃の思いやりで、笑顔を膨らます」に定めました。 「おかきはもち米に水と熱を加えてつくります。100度で水から気体に変わる力でおかきが膨らむように、私たちもユニークなおかきで世界に笑顔をふくらませたいと考えています」 社内にミッションを浸透させるため、毎年1月、その年の社の目標や役割分担、行動計画を決めるようにしました。 「ある年は『面白いせんべい屋になる』をテーマに据えました。実現できるかは別にして、社員のアイデアは否定せず、いったんすべて受け止める姿勢を持つようにしました。するとテーマに伴ったアクションが生まれ、商品開発につながりました」 そうして、トップダウンの傾向だった社風も徐々に変わりました。
サステイナブルなおかき商品を販売
従業員から募ったアイデアで商品化につながったのが、2020 年10月に発表した「Kakecco」(カケッコ)シリーズです。 工場からの「おかきの製造過程で欠けやこわれがたくさん出て、廃棄する量が多い。活用できたら利益に貢献できるのでは」という提案が開発のきっかけでした。 欠けやこわれをパッケージ化した「久助」という既存商品はありましたが、あくまで「訳あり」や「お徳用」といった家庭向け商品の立ち位置でした。「『久助』の手軽さは維持しつつ、よりファッショナブルにできれば、利益と社会貢献を両立できると考えました」 「カケをエコに」というコンセプトのもと、フードロス削減をめざした「Kakecco」が生まれました。家庭用だけでなく贈答用にもなるようなデザインを意識し、保存に便利で食べやすいパッケージに。今まで米菓になじみがなかった層にも興味を持ってもらう工夫を施したといいます。 持参した紙袋やビンなどに、好きな味・好きな量を詰められるポップアップストアを開いたり、そのまま食べられるおかきのスプーンを販売したりするなど、サステイナブルな試みも行いました。 「Kakecco」の売り上げの3%を国際 NGO「ワールド・ビジョン・ジャパン」に寄付しており、2024年1月時点の累計額は230万円にのぼります。 そのほかにも、おかきのイメージを変える商品を生み出しています。 2021年にはスープに入れて食べる「ARARE JUMPIN!」(アラレ・ジャンピン)を販売。子育て中の従業員が、忙しい朝でもサッと用意でき、子どもも喜んで食べるものという視点で考えました。 自分で焼いて味つけができるアウトドア向けの「CAMP de OKAKI」は、キャンプ好きという山田さんのアイデアから生まれ、焼き工程前のせんべい生地をパックしています。