東大も震撼した「円周率が3なんて、けしからん」…「計算力の低下問題」をはるかに超える問題「円が正六角形でいいんですか?」
東大や京大ほか、難関大学が出題した入試問題には、「数学の本質」がいっぱい詰まっている! 「よりすぐりの良問」を格好の素材として活用する新しい学習法を紹介した『中学数学で解く大学入試問題』が話題になっています。 中学数学の限られた知識や技術で、大学入試問題がなぜ解けるのか? どう解くのか? 思考過程を重視した素朴な解法を通して、有名大学の問題が「わかる喜び」「考える楽しさ」を体感すれば、「数学的思考力」が驚くほど身につく! *本記事は、『中学数学で解く大学入試問題 数学的思考力が驚くほど身につく画期的学習法』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
基本的な数学の知識
基本=簡単ではありません。 「基本=各分野の“基"となり、“本”質となるもの」です。そのため、「基本的な数学の知識」を問う問題とは、バラバラな断片の集まりとしての知識ではなく、「定義から積み上げた知識」であるかを問う問題です。 先の記事で取り上げた、2003年の東京大学理科前期で出題された円周率に関する問題を少し改変した次の問題を例に考えてみましょう。 問題 円周率が3より大きいことを証明せよ。 円周率の「定義」はなんですか? あらためて何を聞くんだと思われそうですが、「定義」の知識がなければ「円周率は3.14だから3より大きい」と答えることになってしまいます。 さらに「なぜ円周率は3.14なのですか?」と問われると、「円周率は3.14と習ったから」……と、堂々めぐりになります。 円周率とは、「円周が直径の何倍かを示す数値」です。円周率をとすると、半径が1の円は直径が2なので、その円周は、直径×の「2」となります。 また、円周率の定義と同時に、円周率の近似値をアルキメデスがどのように求めたのかを知っていると、方針が立てやすくなります。アルキメデスは、円周が、 (A)円の内部にピッタリと収まる正多角形の周の長さ (B)円を内部にピッタリと収める正多角形の周の長さ の間にあることを用いて求めました。その多角形が「円に近い図形」になるにつれて、正確な値に近づいていきます。次図は、正五角形の場合のものです。 問題では、円周率が3より大きいことを証明したいので、(A)を考えて、 円周>円の内部に収まる正多角形の周の長さ と評価します。それでは、円の内部に正何角形を収めればいいでしょうか? まず、半径1の円に、最も簡単な正多角形である正三角形を収めることから始めましょう。
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