“伸びしろを残す”イタリア代表、1ー3でフランスに敗戦も…「アイデンティティーが明確になり、今後の成長と発展の明確な道筋が見えたのは大きな成果」【現地発コラム】
こうして0ー2となった直後の35分、イタリアがようやく攻撃でいい形を作り出す。ピッチの幅を大きく使ったポゼッションでフランスの守備ブロックを揺さぶり、左WBフェデリコ・ディマルコがサンドロ・トナーリとの連携で左のポケットに抜け出して折り返したマイナスのクロスに、逆サイドから走り込んだ右WBアンドレア・カンビアーゾが左足のボレーで合わせてGKマイク・メニャンの足下を抜き、ゴールネットを揺らした。 ここまでの5試合でも繰り返し決定機を作り出してきたディマルコとカンビアーゾの「WBホットライン」がこの試合で初めて機能して1点を返し、1点差に詰め寄ったイタリアだが、後半に入ってからもなかなか主導権を手元に引き寄せることができない。一進一退の攻防が続いた後、65分にはフランスに3点目のゴールを許してしまった。 ハーフウェイライン付近から強引なドリブルでペナルティーエリア近くまで持ち込んだマルキュス・テュラムを、トナーリが左のタッチライン際で倒すと、ディーニュが蹴り出したFKにラビオが頭で合わせるという、先制ゴールと同じような形からの得点だった。 この日、軽い故障で欠場したテオ・エルナンデズの代役として起用されたディーニュは、自らの直接FKから生み出した2点目(記録はヴィカーリオのオウンゴール)に加え、2アシストといずれもセットプレーからの3得点すべてに絡む大活躍。アストン・ビラでの好調ぶりを代表にも持ち込む形で、存在感を強烈にアピールした。 イタリアはその後、カンビアーゾ、途中出場したモイゼ・ケーンのシュートでゴールに迫ったものの決め切れず、試合は1ー3で終了。1点差まで詰め寄っていれば守り切れたグループ首位の座をフランスに譲り渡す形で、ネーションズリーグのリーグフェーズを終えることになった。 内容的に見れば、主導権を握って攻勢に立つ時間帯を長く作ることができなかったとはいえ、オープンプレーからは大きな決定機を与えず、90分を通してほぼ互角の攻防を続けたという点で、相手がFIFAランキング2位のフランスであることを踏まえれば、決して悪い試合ではなかった。とはいうものの、結果はセットプレーから3失点して今大会初黒星。フィジカルで上回る相手のセットプレーをどう食い止めるかという課題が浮かび上がったことは確かだ。 最終的にグループ2位に終わったことで、25年3月20日と23日に行なわれるノックアウトステージ準々決勝では、他の3グループで首位のポルトガル、ドイツ、スペインのいずれかと対戦することが確定した(抽選会は現地11月22日)。どこも格上の難敵であることは間違いなく、その意味でも、ここまでの積み上げの真価が問われる戦いになるだろう。 6月のEURO2024が壊滅的だったことを思えば、チームのアイデンティティーが明確になり、メンバーの顔ぶれもほぼ固まって、今後の成長と発展の明確な道筋が見えたというのは、それ自体このネーションズリーグ6試合の大きな成果であり、収穫であると言うことができる。世代交代によって若返ったチームは、まだまだ伸びしろを残しており、来年のワールドカップ予選、そして決まればなんと12年ぶりとなるW杯本大会に向けて、明るい展望が持てそうだ。 文●片野道郎
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