なぜ久保建英の新天地にビジャレアルが本命浮上したのか?
冒頭で記したように2019-20シーズンで5位に入ったビジャレアルは、来シーズンのUEFAヨーロッパリーグ本大会へ出場する。同じく昇格組から7位へと躍進したグラナダは予備予選を突破する必要があり、久保のさらなる成長を促す上で特にレアル・マドリード側が重視している、ヨーロッパの大会に出場できるかどうかという点でビジャレアルの後塵を拝している。 同じく昇格組のオサスナは10位、セルタはギリギリで1部に残留する17位で、ともにヨーロッパの大会には出場できない。ただ、オサスナはクラブ創立100周年のメモリアルイヤーを戦う上での中心選手として久保を迎え入れたいと望み、一時は有力候補として報じられた。 しかし、ビジャレアルが優位に立った一報を受けて、オサスナの本拠地が置かれるパンプローナ市の地元メディアは久保の去就をこう報じている。 「今後何も変わらなければ、黄色いユニフォームを着ることになる」 黄色とはビジャレアルのクラブカラーを指している。そして、オサスナのオファーのなかに含まれていた「中心選手」こそが、レアル・マドリードと久保が何よりも重視する条件となる。マジョルカの後半戦でそうだったように、19歳の久保を中心として長丁場のシーズンを戦える用意があるかどうか。レアル・マドリード側は年間で40試合はプレーさせたいと望んでいる、と『アス』は指摘する。 そして、ビジャレアルも中盤の重要なポジションで新たなタレントを必要としている。 2019-20シーズンのビジャレアルは2つのシステム、アンカーを配置した逆三角形型で中盤を組む[4-3-3]と、トップ下を置く[4-2-3-1]を使い分けて戦ってきた。しかし、前者でインサイドハーフ、後者ではトップ下として11ゴール10アシストをマーク。ヨーロッパサッカー連盟(UEFA)が選出する、ラ・リーガのベストイレブンにも選ばれたサンティ・カソルラが今夏に退団。スペイン代表時代の盟友、シャビ監督に率いられるカタールのアル・サッドへと移籍した。 3トップの右ウイングや、もしくはマジョルカでも主戦場とした右サイドハーフは、ナイジェリア代表のサムエル・チュクウェゼを中心に、チーム得点王のジェラール・モレノが前線から回るケースもあった。右サイドで2人に挑戦するだけでなく、インサイドハーフやトップ下も視野に入れられるビジャレアルの環境は、レアル・マドリード復帰を目標に掲げる久保にとっても大きな意義がある。 ジネディーヌ・ジダン監督のもと、3シーズンぶり34度目のラ・リーガ1部優勝を果たしたレアル・マドリードの基本システムは[4-3-3]だった。マジョルカでマークしたドリブル回数140がリーグ全体で5位に入るなど、ウイングプレーヤーとして爪痕を残し、今夏の移籍市場における人気銘柄になった久保が真ん中でも適性を証明すれば、その分だけ復帰に近づく可能性も高まってくる。