転売対策、品質管理…海外展開を進める「獺祭」がブロックチェーンで挑む日本酒復権【2025年始特集】
最高級酒「Beyond the Beyond」へのこだわり
旭酒造は、同社の最高級日本酒「獺祭Beyond the Beyond 2024」に、世界初となるチタン素材対応の開封検知機能付きNFC(近距離無線通信)タグを導入した。 「BeyondtheBeyond」は年間生産本数を23本に限定し、世界の一流ホテルや富裕層向けに提供されている特別商品だ。販売される場所によっては1本数百万円にもなる。原料となる山田錦は、旭酒造が主催するコンテストでグランプリを獲得した最高品質の米を使用。1俵50万円という特別な原料米を60俵使用するため、タンク1本あたりの原料米コストは約3000万円に達する。 「いい米を使って終わりではわけではなく、磨けるところまで精米を進めていく。醸造の部分でもうちの酒作りのトップ2人が、朝から晩まで付きっきり。時間も精神的なものも全部を費やしている」と旭酒造の桜井一宏社長(写真上)は説明する。 その品質基準は極めて厳格で、過去には大吟醸として優れた出来栄えであっても、「獺祭らしくない」という理由でその年の販売を見送った例もあるという。 この最高級酒に導入されたのが、SBIトレーサビリティとUniTagが共同開発した「SHIMENAWA(しめなわ)」システムだ。通常、NFCタグはチタン素材と接触すると内部アンテナの周波数帯に影響し読み取りができなくなる。今回開発されたタグは、チタン製ボトルでも読み取り可能で、開封検知機能も備えている。 このシステムは米R3社開発のエンタープライズ向けブロックチェーン基盤「Corda(コルダ)」とUniTagのNFC/RFID技術を組み合わせたもので、日本酒の真贋証明、開封検知、正規品管理機能などを提供する。 購入者はスマートフォンでNFCタグにタッチすることで開封情報をブロックチェーンに記録でき、アプリ画面で「開封済」が証明される。旭酒造はこの通知を受け取ることにより、「いつ」「どこで」「どのくらい」消費されたかのデータを取得することが可能となる。 また、SHIMENAWAには限定サイトへの誘導やNFTを配布する機能も実装されており、マーケティング分野での活用も期待できる。 旭酒造は効果的な転売対策を模索する中、SBIトレーサビリティからの提案を受け、SHIMENAWAの採用を決めた。 現在、このNFCタグ付きの「Beyond the Beyond 2024」は流通済みだが、まだ開封通知は届いていない状況だという。「基本的には飲食店から『もう飲んだよ』という連絡は入っているが、タグの読み取り自体はまだのよう」と桜井社長は現状を説明する。