雑談は無駄なのか? 「ビジネスの場では仕事以外の話はしない」人が見落としている“肝心なこと”
【コミュニケーションで大事なこと(1)】「面白いことを言う」より「関心があること」を示す
何か気の利いたことを言おうとか、印象に残る言葉を残そうとか、コミュニケーションの場では、相手に何を言うかについて、すごく考えると思います。 でも、会話においては、もっと大事なことがあります。 それは「関心があること」を示すことです。 先ほど、「意味のつながり」と「感情のつながり」という話をしましたが、コミュニケーションのベースにあるのは「感情のつながり」です。 相手と会って、まず、にっこりする。相手が笑ったら、こちらも笑う。相手の話に「へぇ!」と驚いたり、「えっ、そうなんですか!」と反応したりする。相手の感情が動けば、話している人は自分に関心を持ってくれているように感じます。すると、こちらが特に面白い話をしなくても、よい印象を持ってもらえるのです。 「何か面白いことを言わなくては!」と力むのではなく、きちんと反応していくだけでも、相手とよい関係はつくれますよ。
【コミュニケーションで大事なこと(2)】伝えることは「意味」と「感情」
A 昨日、会社でこんなことがあってさ。……課長、いつも面倒なことばかり言ってきて困るんだ。 B 課長としても立場があるから仕方ないよ。こんなふうに言って返したら? A (愚痴を聞いてほしかっただけなんだけど……) こういうこと、よく起こりますよね。 自分としてはただ話を聞いてほしかったのに、建設的な返しをもらって、不満に思う。相手から見れば、親切に問題を解決してあげようと思ったのに、何が不満なんだ、と考えてしまうかもしれません。 確かに、Bの人は「意味」はやりとりしているのです。 でも、Aの人の「感情」は理解しているでしょうか? コミュニケーションとは、意味を正確に伝えることがすべてではないのです。相手の表情を読み取って、この人はこの話題をもう少し続けたいのか、それともほかの話をしたいのかということを逐一判断しながら、次にどっちにいくのか決めることが大事なのです。次に何の話をするかは相手の表情次第なのです。 しかし、相手の感情を読むことが不得手な場合、「意味」だけでコミュニケーションを続けてしまいがちです。 A 聞いて~、うちの子、こんなバカな失敗をしたんだ。 B え~そうなんだ。ホント、バカだね。 A (そこ、友だちとしてはフォローするところじゃない?) 「そんなことを言われても、わからないし」という人もいるでしょう。 まず、会話は「意味」だけではない、ということを頭に入れて、相手の表情を見るようにしましょう。 特に「何であのとき、会話がぎくしゃくしたんだろう?」という疑問を持ったことがある人は、注意してみてください。 ただし、感情だけでコミュニケーションをすると、言葉の発達していない赤ちゃんや幼児と同じになってしまいます。「意味」と「感情」を車の両輪のようにセットにして考えるのが、大人のコミュニケーションです。
〈著者プロフィール〉齋藤 孝(さいとう・たかし)
1960年静岡生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒。同大学院教育学研究科博士課程を経て現職。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(毎日出版文化賞特別賞、2002年新語・流行語大賞ベスト10、草思社)がシリーズ260万部のベストセラーになり日本語ブームをつくった。著書に『いつも「話が浅い」人、なぜか「話が深い」人』(詩想社)、『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)、『話がうまい人の頭の中』(リベラル新書)等多数。著者累計発行部数は、1000万部を超える。テレビ出演多数。
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