徹夜を続けたらヒトは死ぬのだろうか…子どもの頃の疑問に対する「危険な答え」
〈1日8時間眠るとすると、人生の3分の1ほどを眠って過ごしていることになる。人生が90年だとすると、約30年を眠って過ごしているのだ。はたして、そこまでたくさん眠る必要があるだろうか。〉(『睡眠の起源』より) 【写真】考えたことがない、「脳がなくても眠る」という衝撃の事実…! 私たちはなぜ眠り、起きるのか? 長い間、生物は「脳を休めるために眠る」と考えられてきたが、本当なのだろうか。 発売即重版の話題書『睡眠の起源』では、「脳をもたない生物ヒドラも眠る」という新発見、さらには自身の経験と睡眠の生物学史を交えながら「睡眠と意識の謎」に迫っている。 幼い頃、眠るのが嫌いだった『睡眠の起源』の著者はこう思っていたという。 〈「睡眠は本当に必要なのか」と疑問に思っていた。夜になるといつも考えていたことがある。もしこのまま眠らずに起き続けたらどうなるのだろう──〉 その後、徹夜で試験に臨み、散々な結果になった。 〈今となって振り返れば、おそらく睡眠不足のせいだ。集中力が低下し、勉強した記憶も定着していなかった。 でもあのときは、「眠気など気合で我慢できるもので、努力不足を睡眠不足のせいにしてはいけない」と思っていたものである。 高校生や大学生くらいの時期には、つい自分の体力を過信し、徹夜で勉強したり遊んだりして、無理をしてしまうことが多い。〉(『睡眠の起源』より) いまではギネス世界記録などで記録が認められないという断眠の実験。 人が眠らなかったらどうなるのだろうか。かつての挑戦を見ていこう。 〈人が眠らなかったらどうなるのか──ランディは、断眠の実験を思いつき、自らの身をもって検証しようとした。 1963年12月28日、ランディはクリスマス休暇を使って“挑戦”を始めた。実験には協力者がいて、彼が眠らないように常に話しかけたりしていたという。眠らずに起き続けた彼は、どのような経過を辿ったのか? 徹夜2日目、彼は目の焦点を合わせることが難しくなって、テレビを見なくなった。3日目になると情緒の変化が激しくなり、吐き気を催した。徹夜4日目になっても、彼は眠気に抗い、耐え続けた。幻想や妄想があらわれ、道路標識が人間であると感じたり、自らが偉大なフットボール選手だと誇示したりしたという。 7日目あたりになると、言葉が不明瞭になって、まとまった話をすることができなくなっていた。もう中断してもよさそうなものだが、ランディはそのまま耐え続け、なんと年が明けた1964年1月8日までの11日間、時間にして264時間の断眠記録を達成したのである。当時としては、最長の断眠記録だった。 狙い通り、彼の挑戦は、アメリカ中で大きな注目を集めることになる。最後の3日間は、睡眠を研究する専門家による観察を受けることになり、断眠の経過は、後に論文として発表された。〉(『睡眠の起源』より) 人だけでなく、動物の断眠の実験から見えてくることもある。 〈断眠ラットは実験前に比べて、睡眠時間が87.4パーセントも減った。断眠ラットは、食事量が増えた一方、体重は減少した。さらに、皮膚の傷が目立ち、足の腫れが見られるようになって、断眠を始めてから2~3週間で、死んでしまったのである。〉(『睡眠の起源』より) つづく「睡眠は「脳の誕生」以前から存在していた…なぜ生物は眠るのか「その知られざる理由」」では、常識を覆す「脳がなくても眠る」という新発見から、多くの人が知らない「睡眠の現象」という正体に迫る。
現代新書編集部