インテル、もはや入ってない…株価指数「ダウ平均」からも除外、エヌビディアとの明暗がくっきり分かれたワケ
「インテル、入ってる」の驕り、分かれた明暗の背景
ちょうどこの逆が、インテルの失速の遠因なのではないか。同社は技術的な遅れだけでなく、より根本的な経営判断の失敗もあったとみられている。 同社は、2010年代後半にはAppleやMicrosoftといった主要企業が自社チップの設計に注力し始め、インテル製品への依存度を下げはじめた。これにより、2010年代から「インテル、もう入ってない」PCが増えてくることになった。実は10年前からインテルの伝統的なビジネスモデルには限界が見えつつあったのだ。 一方、NVIDIAのCEOジェンスン・フアンは、先見性と果敢な投資で企業を牽引してきた。彼のリーダーシップの下、NVIDIAはGPUの可能性を最大限に引き出し、AIブームの中心に位置する企業へと成長を遂げた。 技術革新の波に乗れた企業と、停滞した企業。その差は、現在の市場評価に如実に表れているといえるだろう。
「インテル、まだ終わってない」?
しかし、インテルの最新の決算を確認すると再浮上の可能性もみえてくる。 特に注目すべきは、ファウンドリ(半導体受託製造)事業への再参入だろう。これまで自社工場での製造にこだわってきたインテルだが、TSMCやSamsungといった業界大手のように他社製品を受託生産する形で新たな収益源を模索している。これは、これまでインテルが築いてきた製造技術を活用できる可能性を秘めている。 そして、直近の決算でインテルが売上高を超える莫大な損失を計上した要因を深掘りすると、これは、一時的な費用が大部分を占めている「膿出し」型の損失であることがわかる。 同社は2025年までに100億ドルのコスト削減を目指し、組織再編や人員削減を進めており、今第3四半期には28億ドルにものぼるリストラ費用が計上された。 そして、純損失の大部分を占めた「繰延税金資産に対する評価減の計上」や、「製造資産の減損」、「その他の償却費用」についても、これらはあくまで帳簿としての損失にとどまり、現金の出費を伴った損失ではない。したがって、166億ドルという一見莫大な損失は、同社の経営基盤そのものを脅かす性質のものではないのだ。むしろ、これまで溜まっていた潜在的な損失要因を数値として計上し、同社の経営を再構築していく姿勢を示している点を評価すべきである。 インテルには、製造技術やブランド力という大きな資産が残されている。依然として課題が山積していることも事実だが、インテルはAI分野でも巻き返しも試みている。新世代のIntel XeonプロセッサやGaudi 3 AIアクセラレータを投入し、IBMなどのパートナーと協力して市場シェアの拡大も虎視眈々と狙っている。 同社のCMフレーズを皮肉って「インテル、もう入ってない」とイジるのは、確かにキャッチーかもしれない。しかし、必要以上に不調なイメージだけが先行すると、同社の復活の兆しを見逃してしまうリスクがある。 そして、今は順調に見えるNVIDIAも、裏では過剰な期待値の織り込みといったリスク要因も内包していると指摘されはじめている。NVIDIAは製造を外部に委託しているため、TSMCなどの供給網に依存している点はインテルと比べて相対的な弱みでもある。AI需要がピークを迎えた後、成長が鈍化するリスクや、他社の追随による競争激化にも注意が必要だろう。 栄光も転落も、永遠に続くものではない。10年前の選択が現在の明暗を分けたように、今の選択が未来の評価を決める。インテルはもう終わってしまったのか、まだ終わっていないのか。今後のインテルの動向に注目していきたい。
古田 拓也(1級FP技能士)