インテル、もはや入ってない…株価指数「ダウ平均」からも除外、エヌビディアとの明暗がくっきり分かれたワケ
不調の前兆は2010年ごろから出ていた?
インテルが転落する兆しを見せたのは、2010年代中盤のことだ。当時、インテルは依然としてパソコン用CPU市場で圧倒的なシェアを誇っていたが、テクノロジー業界全体ではこの時点で「クラウド時代」や「AI時代」へ移行し始めていた。これに対し、インテルは依然として顧客の支持が厚かった「PC用プロセッサ」や「サーバー向けCPU」という伝統的な製品群に依存し続けていた。 特に問題となったのが、14nmおよび10nmプロセスの開発遅延である。半導体業界では、製造プロセスを微細化し性能を向上させることが競争力の鍵となる。しかし、インテルは10nmプロセスの量産に苦しみ、市場投入が大幅に遅れた。この間にAMDやAppleのような企業が台頭し、競争力が削がれる結果となった。 さらに、2010年代後半には、データセンターやAI向けの特殊用途プロセッサ(GPUや専用チップ)の需要が急増。インテルはこうした新市場に対して積極的な投資を行わず、変化の波を捉えられなかった。一方、NVIDIAはこの時期、すでにGPUのAI用途での可能性を見抜き、市場シェアを拡大し始めていた。
ニッチ枠「NVIDIA」の隆盛、実は運も良かった?
インテルが足踏みしている間に、NVIDIAは着実に未来を見据えた戦略を展開していた。一昔前のNVIDIAはどちらかといえば米国の著名FPSゲームシリーズである「Call of Duty」等で見かけることが多く、ゲーマーの間で知名度が高かったニッチなイメージのある企業であった。 しかし、NVIDIAはGPUの用途をゲーム市場に留めず、AIトレーニングやディープラーニングといった次世代技術への応用に広げていった。この方向性を支えたのが、自社開発のソフトウェアフレームワーク「CUDA」だ。CUDAは研究者やエンジニアがGPUを効率的に活用するための基盤を提供し、NVIDIAの製品が学術機関や企業で採用される機会を増やした。2010年代初頭から中盤にかけて、NVIDIAはさまざまな分野で名前を見かけることが多くなっていった。 2016年以降はAIとディープラーニング市場が急速に成長し、NVIDIAのGPUはその主役となった。この頃にはすでに、インテルが持つ従来型CPUの優位性は次第に薄れ、NVIDIAが新時代の半導体業界を代表する存在として台頭していた。 2016年、2021年に隆盛を極めた暗号資産の業界においてもNVIDIA製のGPUが脚光を浴びていた。暗号資産のマイニングに高度な計算処理能力が求めらたこともあり、暗号資産のブームが発生するたび、NVIDIAのGPUが店頭から消え、中古価格が大幅に高騰するような場面も度々みられた。 たしかに、マイニング用途としてのGPU需要が高まった点については戦略というよりは運や投機の側面が大きかったことも否定できない。しかし、NVIDIAに実力がなければ、今も「マイニングGPU会社」のような立ち位置に落ち着いており、成長も一過性のもので終わっていただろう。 運も味方につけて、足元のAIブームをとらえるための投資を怠らなかった点も、今日のNVIDIAにおける高成長を支えているといって過言ではないだろう。