優勝”本命”急浮上の横浜DeNAが挑むITデータ野球革命
壁谷氏はデータ活用の理念をこう力説した。 「あくまでも補助ツールです。データの何がどう使えるかを理解してもらい、数字をもとに何をするのか、どうトレーニングに結びつけるかが重要です。いい数値を出すことを目的にすると違和感が生まれます。数値で出るのは、あくまでも課題。その課題をどう克服するかのアプローチが大事なのです。選手自身の意識が一番のポイントになってきます」 開幕が延期された3か月間で、投手では浜口遥大が積極的にデータを活用した。浜口自身、オフに今永昇太らと米国シアトルの最先端トレーニング施設の「ドライブライン・ベースボール」を訪れて、データの活用方法を知ったという下地もあり、「自主トレ期間中も、浜口が周りに影響を与えて積極的に使う選手が増えた」と壁谷氏。 投手では、三上朋也、桜井周斗、上茶谷大河、パットン、大貫晋一、打者では、関根大気、宮城滝太、益子京右らの若手にルーキーの森敬斗、東妻純平、田部隼人らが積極的に取り組んでいてスマホを使って自分でデータをチェックする方法もリモートで指導した。 それらのデータは、チームのクラウドに蓄積され、ソトなども「いい状態」時のデータ値を今後のチェックのために残しているという。 メジャーでは、マイナー組織の育成にITデータの活用が一定の成果を生み、今や常識化している。若手の育成にうまくあてはめて用いることが、ITデータの使い方としては適しているのかもしれないが、「ITデータを制する者がプロ野球を制す」という時代が、もうそこまで来ているのも確かだ。 3か月遅れでスタートする120試合制のイレギュラーなシーズンを勝ち抜くためには、まったく新しい新型コロナと共存する野球のスタイルへの対応が必要になる。 開幕を前に壁谷氏が誓う。 「セ・リーグは、かなり混戦だと思います。どのチームにもチャンスはありますが、ちょっとした差で、順位がガラっと変わると思うんです。守備シフトなど、我々がやっていることが少しでも、その”ちょっとした差”につながれば」 横浜DeNAのITデータ戦略がベイスターズとしては22年ぶり、DeNAとなってからは初の悲願達成を陰で支える”無形の力”となるのかもしれない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)