「気持ちには引力がある」指導キャリア25年目のルーキー監督・森山佳郎の情熱に選手もサポーターも引き込まれ、仙台は一丸となって戦い抜いた
誰よりも熱量を持って接し、選手たちの心に火を灯す
厳しいトレーニングを重ねたのも最後に笑うため。そうした姿勢は実を結び、今季は開幕から好調を維持し、J1昇格プレーオフに挑む権利を手に入れた。準決勝で3位の長崎に4-1で勝利したものの、先述のとおり岡山に敗北。それでも前年16位のチームと考えれば、十分すぎる結果だった。 選手も含め、誰もが悔しい。その一方で試合後には森山監督への感謝があちらこちらから聞こえた。今季チーム最多の13ゴールを決めたFW中島元彦は「ゴリさんを最後に喜ばせてあげられなかったのが悔しい」と言いつつ、指揮官への想いを口にする。 「自分たちがやらないと怒りますし、自らが先頭に立ってやってくれた。自分も含めて、みんなでやるぞという気持ちで戦ってくれていたので、ありがたい存在でした」 選手が本気になれたのも、森山監督の情熱が伝播したからこそ。「選手が純粋で素直だった。違うよ、みたいな感情があるかなと思ったら、意外に高校生みたいなノリで、選手も認めてくれたので良い関係性でやれたのかな」と指揮官は言ったが、誰よりも熱量を持って接した結果が選手たちの心に火を灯した。 それは声援を送る側も同じ。帰路のバスに乗り込む直前、大勢の人がチームの見送りに駆けつけた。サポーターからは森山監督に対して温かいメッセージが飛ぶ。「来年は絶対にJ1に行きましょう」。 シーズンを通じて熱い戦いを見せた指揮官にサポーターも引き込まれた。人間臭さを全面に押し出し、誰よりも熱のこもった言葉で選手たちを鼓舞する。自らが先頭に立ち、時に57歳の新米監督はトレーニングで選手と一緒に汗を流した。 その姿はU-17日本代表を率いていた頃と変わらない。全力を尽くした姿勢を知っているからこそ、サポーターは信じてついてきた。 森山監督が育成畑で指導していた際、頻繁に口にしていた言葉がある。 「気持ちには引力がある」 そのスタンスは今も昔も変わらない。仙台を生まれ変わらせた森山監督は来季、どんなチームを作り上げるのか。ひと言では表わせない悔しさをエネルギーに変え、次こそは選手、スタッフ、サポーターとともに喜びを分かち合いたい。 取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
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