選手層が“厚すぎる”という「ソフトバンク」の構造的問題 他球団が狙いを定める“人材の宝庫”の実態
「一軍の試合に出たい」
12月9日に行われた現役ドラフトで、密かに注目を集めていたのが、福岡ソフトバンクホークスのリチャード砂川(25)が「指名対象リストに入っているのかどうか」だった。 【写真】2025年新入団の精鋭たち。この中から1軍で戦えるのは? そのリチャードが2回目の契約更改に臨んだのは12月7日。前回同様、現状維持の推定年俸1000万円でサインしたわけだが、会見後に出たのは移籍に含みを持たせる言葉だった。
「主に自分の覚悟を話させてもらいました。覚悟を持ってサインできました」 前回同様、1時間を優に越えるロング交渉になってしまった。 「1回目の交渉後に出た『誰かのケガ待ちというのはイヤ』という本人の発言が全てを物語っています。今季もファームで18本塁打を放ち、史上初の5年連続本塁打王と3年連続の打点王となりました。一軍の一塁には山川穂高(33)がいて、三塁には栗原陵矢(28)がいます。DHには柳田悠岐(36)が入ることも多くなったので、出場機会がないとボヤくリチャードの気持ちも分かります」(スポーツ紙記者) 過去2回の現役ドラフトでソフトバンクを離れた大竹耕太郎(29=阪神)、水谷瞬(23=日本ハム)は“主力級の活躍”を収めている。球団事務所で行われた会見で「ケガ待ち」なる批判発言をしたくらいだから、リチャードの「一軍の試合に出たい」の気持ちは本当に強いものだったのだろう。 しかし、現役ドラフトでの移籍は実現しなかった。リチャードが指名対象リストに入っていたのか否かは不明だが、一軍の試合に出場する機会に恵まれないのは、山川などの絶対的なレギュラーがいるからではない。ソフトバンクがNPBで唯一、四軍まで持つ大所帯であることも一因となっている。 「投手が一軍で登板するには、球速150キロ以上のノルマがあるとか、そんなジョークも聞かれます」(地元メディア関係者) 選手の人数が多ければその分、一軍昇格への壁も厚くなる。2024年シーズンの選手総人数は121人。投手66人、捕手11人、内野手27人、外野手17人で、さらに小久保裕紀監督(53)以下、37人のファーム監督、コーチがいた。プロ野球チームの最大・支配下登録数は70人だから、投手だけで「1チーム分」とほぼ同じ選手数を持っているわけだ。 「その選手層の厚さが4年ぶりとなる今季のリーグ優勝にもつながり、また、121人もの大所帯に年俸を払う財力があって、練習施設、遠征・宿泊費用など球団を運営していく資金も潤沢にあります」(前出・同)