直木賞の島本理生氏「待った18年間」 芥川賞合わせ計6回候補
第159回芥川賞・直木賞の受賞会見が18日夜、都内のホテルで行われ、「ファーストラヴ」で直木賞を受賞した島本理生(りお)氏(35)は「デビュー18年目で、芥川賞4回、直木賞に2回(ノミネート)。折に触れて待った18年間だったので、すごくホッとしたのが正直なところです」と喜んだ。
1983(昭和58)年5月、東京都板橋区生まれ。都立新宿山吹高在学中の2001年に「シルエット」で第44回群像新人文学賞の優秀作を受賞し、小説家としてデビュー。著書は2003年に第25回野間文芸新人賞を受賞した「リトル・バイ・リトル」や、2006年の「ナラタージュ」など。直木賞は、2011年の「アンダスタンド・メイビー」以来、2回目のノミネートで受賞となった。芥川賞には過去、4回ノミネートされている。 18年前のデビュー時の自分になんと声をかけたいかと問われ、「7年前の最初の直木賞候補になったことを思い出していました。今だから言えますが、その後3年くらい夢に見ました」と苦笑。受賞の電話を受けた時は「私はガッツポーズしました。恥ずかしいですが」。 受賞した「ファーストラヴ」については「思春期の少女への性暴力や虐待というテーマでもう一度広く読んでもらえるチャンスを得たい、という気持ちがすごく強かったので、今回の小説で受賞出来てすごく良かった」と会心の受賞だったと明かした。 臨床心理士という大人の女性からの視点で描いた点については「『夏の裁断』という小説で読者の賛否が分かれたのが印象的だった。傷ついた主人公の視点で語ると理解されにくいんだなあと。じゃあ第三者が複雑な内面を解説するということで書き直してみたらどうだろうとスタートした」と解説した。 夫は小説家の佐藤友哉(ゆうや)さん。受賞を電話で伝えると「おめでとうと言ったあと、ママ一等賞になったよ、と言っていました」と顔をほころばせた。「執筆を精力的に続けられるのは夫のおかげです。御飯を作ってくれたり、私が留守の時は息子の面倒を見てくれたり」と感謝の言葉も口にした。 今後も、自分が書いてきたテーマについて、さらに深みを増していきたいと考えている。「作家としての課題や、書きたいテーマも膨らんでいるので、まだまだこれからかなと思います」 (取材・文:具志堅浩二)