テーマ型ETFの主役交代、メイドインアメリカがイノベーション抜く
(ブルームバーグ): ウォール街のトレーダーは今年、未来的なテクノロジーに全力投球しているかもしれないが、上場投資信託(ETF)の世界では、経済に対する昔ながらの賭けが盛んだ。
米政府は気候変動対策と並行して米国の自給率を高める長期プロジェクトに着手しており、米企業は新型コロナウイルスのパンデミック後の国内サプライチェーンの強化を模索している。地政学的な圧力に加え、新たなエネルギーインフラに対する需要の高まりが加わり、産業セクター全体が再起動しようとしている。
製造業活動の鈍化が顕著で、米消費者のモノへの需要に疑問符がつく中でも、投資家はこぞって産業ETFに資金を投じている。
その最たる例として、グローバルX米国インフラ開発ETF(PAVE)が、キャシー・ウッド氏のアーク・イノベーションETF(ARKK)を退け、最大のテーマ型ETFとなった。ブルームバーグがまとめたデータによると、PAVEには今年15億ドル(2150億円)が新たに流入し、残高は75億ドルとなっている。一方のARKKは今年、資金流出が続き、現在の残高は約52億ドルと、年初の90億ドル近くから縮小している。
産業をテーマとしたETFの設定も相次いでいる。PAVEの発行会社グローバルXは、米企業を除いたインフラストラクチャーファンド「IPAV」をデビューさせた。ブラックロックは7月にiシェアーズ米国製造業ETF(MADE)を設定、テマは昨年5月に米国リショアリングETF(RSHO)を設定した。
伝統的な実体経済への投資が依然として求められている一方で、キャッシー・ウッド氏らが好んでいた、創造的破壊をもたらすがほとんど収益性のないハイテク企業への投資に対する意欲が低下していることが浮き彫りになる。
ストラテガスのETFストラテジスト、トッド・ソーン氏は「ARKKを含むハイテクに特化したテーマ型ファンドのパフォーマンスが低迷していることが、投資家をインダストリアルテーマに特化したETFに向かわせる一因となっている」と説明。