相変わらずゲームシーンでは“チート級”の実力 11月15日発売の高コスパCPU「Ryzen 7 9800X3D」(約8.7万円)を試して分かったこと
AMDが11月15日午前11時に、デスクトップPC向けの新型CPU「Ryzen 7 9800X3D」を発売する。パッケージ(ボックス)版の想定販売価格は8万6800円となる。先代の「Ryzen 7 7800X3D」と比べると、発売当初で1万5000円増しという価格設定だ。 【画像】CINEBENCH R23の結果 製品名の通り、Ryzen 7 9800X3DはAMD独自の「3D V-Cacheテクノロジー」を適用することでL3キャッシュの容量を大幅に増量したモデルとなる。L3キャッシュの増量が特にゲームにおいて効果が大きいことは、過去のRyzen X3Dシリーズのレビューでも明らかとなっている。 この記事では、AMDから提供を受けたレビューキットを用いて、Ryzen 7 9800X3Dの性能をチェックしていく。
Ryzen 7 9800X3DはどんなCPU?
一部おさらいを兼ねて、Ryzen 7 9800X3DがどんなCPUなのかを確認していこう。 その名の通り、Ryzen 7 9800X3Dは2024年夏に発売されたデスクトップ向け「Ryzen 9000シリーズ」に属する。モデル名の「X」は高性能タイプであること、「3D」は3D V-Cacheテクノロジーを適用していることを意味する。 CPUアーキテクチャは最新の「Zen 5」で、先代(Zen 4アーキテクチャ)と比べるとシングル/マルチスレッド性能を引き上げる一方で、同等モデルと比べてTDP(熱設計電力)を引き下げることで消費電力当たりの性能(いわゆる「ワッパ」)を改善している。 CPUソケットはRyzen 7000シリーズから使われている「Socket AM5」なので、Ryzen 7000/8000/9000シリーズに対応する既存のマザーボードを流用してアップグレードすることも可能だ(※1)。 (※1)マザーボードの出荷時期によっては装着前にUEFI(BIOS)の更新が必要(更新に際してCPUが必要な場合は、搭載しているUEFIが対応するCPUを用意しなくてはならない) 本製品は3D V-CacheテクノロジーでL3キャッシュを増量しているが、「第2世代」となって実装方法が若干変わっている。 従来(第1世代)では、CPUコアからなる「Core Complex Die(CCD)」の“上”に追加のキャッシュメモリを積層実装していた。それに対して、Ryzen 7 9800X3D(第2世代)ではCCDの“下”に積層実装するようになった。 追加のキャッシュメモリの実装箇所が変わったことで、CCDを含むCPUパッケージの主要なチップをより効率的に冷やせるようになった。このことで、従来はベースモデルよりも低かった最大動作クロックの底上げと、完全なアンロックへの対応を実現している。Ryzen 7 9800X3Dの場合、先代の「Ryzen 7 7800X3D」と比べるとベースクロックは500MHz、最大クロックは200MHz向上した。 Ryzen 7 9800X3Dと、本CPUのベースとなった「Ryzen 7 9800X」の主な仕様は以下の通りだ。 ・Ryzen 7 9800X3D ・CPUコア:8基16スレッド(4.7GHz~5.2GHz) ・L1キャッシュ:480KB ・L2キャッシュ:8MB ・L3キャッシュ:96MB ・TDP:120W Ryzen 7 9700X ・CPUコア数:8基16スレッド(3.8GHz~5.5GHz) ・L1キャッシュ:640KB ・L2キャッシュ:8MB ・L3キャッシュ:32MB ・TDP:65W 比べて気になるポイントは、動作クロックの幅が“狭く”なり、TDPが55W引き上げられたところだろう。特にTDPだけを見れば、16コア32スレッドの最上位モデル「Ryzen 9 9900X」と同等だ。 消費電力の“引き上げ”は、どこまで性能に影響するのか――次のページからベンチマークテストでチェックしてみよう。