相変わらずゲームシーンでは“チート級”の実力 11月15日発売の高コスパCPU「Ryzen 7 9800X3D」(約8.7万円)を試して分かったこと
Ryzen 7 9800X3Dの実力をベンチマークテストでチェック
ここからは、Ryzen 7 9800X3Dの実力をベンチマークテストを通してチェックしていく。 今回AMDが提供したレビューキットは、Ryzen 7 9800X3D(パッケージ版)の他、マザーボード、メモリやSSDもセットになっている。足りないパーツは筆者が用意し、ベンチマーク環境を構築している。 参考として、今回は過去にベンチマークテストを実施したRyzen 9000Xシリーズのスコアや、Ryzen 7 9800X3Dのテスト時に近い環境を構築した「Core Ultra 200Sシリーズ」のスコアも掲載する。 計測時期の違いによりOSやデバイスドライバのバージョンが異なるためあくまでも参考程度に捉えてもらえれば幸いだ。 CINEBENCH R23 まず、3Dレンダリングを通してCPUのパフォーマンスを確認できる「CINEBENCH R23」を実行した。スコアは以下の通りだ。 ・シングルコア ・Ryzen 7 9800X3D:2192ポイント ・Ryzen 9 9950X:2215ポイント ・Ryzen 9 9900X:2187ポイント ・Ryzen 7 9700X:2196ポイント ・Ryzen 5 9600X:2174ポイント ・Core Ultra 9 285K:2398ポイント ・Core Ultra 5 245K:2181ポイント マルチコア ・Ryzen 7 9800X3D:2万2862ポイント ・Ryzen 9 9950X:4万293ポイント ・Ryzen 9 9900X:3万2616ポイント ・Ryzen 7 9700X:1万9858ポイント ・Ryzen 5 9600X:1万6682ポイント ・Core Ultra 9 285K:4万262ポイント ・Core Ultra 5 245K:2万4763ポイント Ryzen 9000シリーズ内で比べると、Ryzen 7 9800X3DのスコアはRyzen 7 9700Xに近い。「Ryzen 7 9700XのL3キャッシュを増量したCPUがRyzen 7 9800X3D」だと考えると、そこまでの違和感はない。 シングルコアのスコアを見てみると、Ryzen 9000シリーズは割と“横並び”だ。一方、マルチコアは「コアの数」と「TDP」の違いがリニアに影響している様子がうかがえる。 Ryzen 7 9800X3Dは、CPU単体では「ワッパがいい」と評することは難しい。ただし、引き上げられたTDPの分はしっかりと性能向上の恩恵にあずかれそうだ。 Blender Benchmark もう1つ、CPUを使うテストとして「Blender Benchmark」も試した。 その名の通り、Blender Benchmarkは2D/3Dアニメーション制作ツール「Blender」をベースとしたベンチマークテストアプリで、レンダリングを通してCPUやGPUのパフォーマンスをチェックできる。 今回は「Monster」「Junkshop」「Classroom」の3つのシナリオをCPUで実行し、1分当たりに生成できたサンプル(オブジェクト)の数を比較する。結果は以下の通りだ。 ・Monster ・Ryzen 7 9800X3D:145.910652個 ・Ryzen 9 9950X:255.233524個 ・Ryzen 9 9900X:200.184328個 ・Ryzen 7 9700X:124.063776個 ・Ryzen 5 9600X:100.753558個 ・Core Ultra 9 285K:251.667320個 ・Core Ultra 5 245K:144.613399個 Junkshop ・Ryzen 7 9800X3D:102.355844個 ・Ryzen 9 9950X:183.687416個 ・Ryzen 9 9900X:144.937113個 ・Ryzen 7 9700X:90.231814個 ・Ryzen 5 9600X:72.078098個 ・Core Ultra 9 285K:166.318361個 ・Core Ultra 5 245K:95.567365個 Classroom ・Ryzen 7 9800X3D:70.827779個 ・Ryzen 9 9950X:128.055700個 ・Ryzen 9 9900X:101.518040個 ・Ryzen 7 9700X:62.825483個 ・Ryzen 5 9600X:51.117842個 ・Core Ultra 9 285K:121.514872個 ・Core Ultra 5 245K:71.578991個 結果の傾向は、CINEBENCH R23のマルチコアスコアに近い。CINEBENCH R23はもちろん、Blender BenchmarkもCPUコアの“純粋な”演算性能を見るテストなので、Ryzen 7 9800X3Dの良好なスコアはL3キャッシュ増量よりも動作クロック向上による効果と見るべきだろう。 PCMark 10 続けて、PCの総合ベンチマークテストアプリ「PCMark 10」の総合スコアを比べてみよう。 ・Ryzen 7 9800X3D:9989ポイント ・Ryzen 9 9950X:1万949ポイント ・Ryzen 9 9900X:1万632ポイント ・Ryzen 7 9700X:1万646ポイント ・Ryzen 5 9600X:9120ポイント ・Core Ultra 9 285K:9529ポイント ・Core Ultra 5 245K:9001ポイント ここまでRyzen 7 9700Xよりも高いスコアを記録してきたRyzen 7 9800X3Dだったが、このテストでは負けてしまっている。Ryzen 7 9800X3Dが勝つと思っていたので少し驚いてしまったが、テストの内容を考えるとあり得ない結果というわけでもない。今後のUEFIやOS、ドライバの最適化によってRyzen 7 9800X3Dが逆転することがあり得るかもしれないが、あっても“辛勝”くらいになるかもしれない。 「普段使い」という範囲では、3D V-Cacheによる大容量L3キャッシュの恩恵はあまり大きくない。ただし、この後に続くテストを見れば分かるが、それは「Ryzen 7 9800X3Dの性能が低い」ということを意味しない。 3DMark 続けて、3Dグラフィックスの総合ベンチマークテストアプリ「3DMark」から、DirectX 11ベースの「Fire Strikeシリーズ」と、DirectX 12ベースの「Time Spyシリーズ」を一通り実行してみた。総合スコアは以下の通りだ。 ・Fire Strike(フルHD:1920×1080ピクセル) ・Ryzen 7 9800X3D:5万1620ポイント ・Ryzen 9 9950X:5万719ポイント ・Ryzen 9 9900X:4万9572ポイント ・Ryzen 7 9700X:4万9218ポイント ・Ryzen 5 9600X:4万6596ポイント ・Core Ultra 9 285K:4万3523ポイント ・Core Ultra 5 245K:4万2988ポイント Fire Strike Extreme(WQHD:2560×1440ピクセル) ・Ryzen 7 9800X3D:3万2674ポイント ・Ryzen 9 9950X:3万3054ポイント ・Ryzen 9 9900X:3万2274ポイント ・Ryzen 7 9700X:3万1862ポイント ・Ryzen 5 9600X:3万783ポイント ・Core Ultra 9 285K:3万1420ポイント ・Core Ultra 5 245K:3万1291ポイント Fire Strike Ultra(4K:3840×2160ピクセル) ・Ryzen 7 9800X3D:1万7951ポイント ・Ryzen 9 9950X:1万8036ポイント ・Ryzen 9 9900X:1万7833ポイント ・Ryzen 7 9700X:1万7730ポイント ・Ryzen 5 9600X:1万7339ポイント ・Core Ultra 9 285K:1万7926ポイント ・Core Ultra 5 245K:1万7823ポイント Time Spy(WQHD:2560×1440ピクセル) ・Ryzen 7 9800X3D:2万5467ポイント ・Ryzen 9 9950X:2万5014ポイント ・Ryzen 9 9900X:2万4848ポイント ・Ryzen 7 9700X:2万4506ポイント ・Ryzen 5 9600X:2万2391ポイント ・Core Ultra 9 285K:2万5697ポイント ・Core Ultra 5 245K:2万4969ポイント Time Spy Extreme(4K:3840×2160ピクセル) ・Ryzen 7 9800X3D:1万2430ポイント ・Ryzen 9 9950X:1万3806ポイント ・Ryzen 9 9900X:1万3328ポイント ・Ryzen 7 9700X:1万2066ポイント ・Ryzen 5 9600X:1万1239ポイント ・Core Ultra 9 285K:1万4148ポイント ・Core Ultra 5 245K:1万2972ポイント 今までのテストと打って変わって、Ryzen 7 9800X3Dが上位に踊り出るケースが増えた。テストによっては、Ryzen 9 9950Xのスコアも上回っている。 3D V-CacheテクノロジーによるL3キャッシュの増量は、単調な命令(作業)を行うプログラムよりも複数の命令が入れ替わり立ち替わり実行されるプログラムでこそ効果を発揮しやすい。多くのゲームは、まさに「複数の命令が入れ替わり立ち替わり実行されるプログラム」なので、単純に動作クロックを高めるよりも、L3キャッシュを多くした方がパフォーマンスの向上につながるのだ。 3DMarkの主要なベンチマークテストは、比較的負荷の重いゲームで使われるような3Dグラフィックス機能のパフォーマンスを確かめる。プログラムの作りはゲームのそれに近いので、ゲーム同様とにL3キャッシュの増量がスコアの向上に貢献している。 ただし、描画解像度が高くなる(≒処理負荷が大きくなる)ほどスコアの差は小さくなる。これは解像度が高くなるとCPUのパフォーマンス差がボトルネックとなりにくい(GPUのパフォーマンスの方がものをいう)からだ。 とはいえ、Ryzen 7 9800X3Dは“最上位”ではないものの高いゲーミングパフォーマンスを発揮できることは間違いなさそうだ。 FF14ベンチマーク より実際のゲームプレイに近い場面でも、Ryzen 7 9800X3Dの高性能は生かせるのか――ゲームベースのベンチマークテストとして、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」と(旧FF14ベンチマーク)と、「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」(新FF14ベンチマーク)をそれぞれ実行してみよう。 旧FF14ベンチマークは、少し古めのPCを基準に開発されている。そのため、現在では「少し軽量なゲームベンチマーク」ということになる。設定次第では、CPU内蔵のGPUでも良いスコアを記録できる。 一方の新FF14ベンチマークは、ベースとなるゲーム(ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー)においてグラフィックスエンジンが刷新されたこともあり、GPUを中心にシステム要件が引き上げられた。そのため、旧FF14ベンチマークとは異なり、そこそこ“重たい”テストになった。 今回はどちらも画質を「最高品質」設定とした上で、「フルHD(1920×1080ピクセル)」「WQHD(2560×1440ピクセル)」「4K(3840×2160ピクセル)」の3解像度でスコアを計測した。なお、新FF14ベンチマークでは、フレームレートが60fpsを下回った際に超解像技術(※1)を有効化している。 (※1)NVIDIA DLSS(Deep Learning Super Sampling) 2.0またはAMD FSR(FidelityFX Super Resolution)に対応している(今回はDLSS 2.0) スコアは以下の通りだ。 ・旧FF14ベンチマーク ・フルHD ・Ryzen 7 9800X3D:4万7206ポイント ・Ryzen 9 9950X:3万7376ポイント ・Ryzen 9 9900X:3万5826ポイント ・Ryzen 7 9700X:3万7517ポイント ・Ryzen 5 9600X:3万6740ポイント ・Core Ultra 9 285K:3万5621ポイント ・Core Ultra 5 245K:3万1191ポイント WQHD ・Ryzen 7 9800X3D:4万593ポイント ・Ryzen 9 9950X:3万1416ポイント ・Ryzen 9 9900X:3万400ポイント ・Ryzen 7 9700X:3万2215ポイント ・Ryzen 5 9600X:3万2076ポイント ・Core Ultra 9 285K:3万1272ポイント ・Core Ultra 5 245K:2万8815ポイント 4K ・Ryzen 7 9800X3D:2万2471ポイント ・Ryzen 9 9950X:2万1332ポイント ・Ryzen 9 9900X:2万1055ポイント ・Ryzen 7 9700X:2万1780ポイント ・Ryzen 5 9600X:2万1703ポイント ・Core Ultra 9 285K:2万1183ポイント ・Core Ultra 5 245K:2万572ポイント 新FF14ベンチマーク ・フルHD ・Ryzen 7 9800X3D:3万9073ポイント ・Ryzen 9 9950X:3万738ポイント ・Ryzen 9 9900X:2万9705ポイント ・Ryzen 7 9700X:3万1701ポイント ・Ryzen 5 9600X:3万1014ポイント ・Core Ultra 9 285K:3万2ポイント ・Core Ultra 5 245K:2万5220ポイント WQHD ・Ryzen 7 9800X3D:2万8704ポイント ・Ryzen 9 9950X:2万5483ポイント ・Ryzen 9 9900X:2万5282ポイント ・Ryzen 7 9700X:2万5617ポイント ・Ryzen 5 9600X:2万5424ポイント ・Core Ultra 9 285K:2万4814ポイント ・Core Ultra 5 245K:2万3252ポイント 4K ・Ryzen 7 9800X3D:1万4105ポイント ・Ryzen 9 9950X:1万4518ポイント ・Ryzen 9 9900X:1万4801ポイント ・Ryzen 7 9700X:1万5071ポイント ・Ryzen 5 9600X:1万4817ポイント ・Core Ultra 9 285K:1万4110ポイント ・Core Ultra 5 245K:1万4038ポイント 旧FF14ベンチマークの特にフルHD/WQHD解像度では、Ryzen 7 9800X3Dのスコアが圧倒的に高い。「あれ、設定間違えたかな……?」と思ったのだが、間違いではなかった。4K解像度になると差は縮まるものの、それでもRyzen 7 9800X3Dがトップに立っている。 新FF14ベンチマークも傾向はおおむね同様だ。 FF15ベンチマーク では、もう少し処理が重いゲームタイトルではどうなるか? 続けて「FINAL FANTASY 15 WINDOWS EDITION BENCHMARK」(FF15ベンチマーク)を試してみよう。こちらは画質を「高品質」とした上で、フルHD/WQHD/4Kの3つの解像度でテストを実行した。結果は以下の通りだ。 ・フルHD ・Ryzen 7 9800X3D:2万2724ポイント ・Ryzen 9 9950X:2万2282ポイント ・Ryzen 9 9900X:2万1309ポイント ・Ryzen 7 9700X:2万1915ポイント ・Ryzen 5 9600X:2万1446ポイント ・Core Ultra 9 285K:2万2373ポイント ・Core Ultra 5 245K:2万844ポイント WQHD ・Ryzen 7 9800X3D:1万9757ポイント ・Ryzen 9 9950X:1万9413ポイント ・Ryzen 9 9900X:1万8939ポイント ・Ryzen 7 9700X:1万9134ポイント ・Ryzen 5 9600X:1万9564ポイント ・Core Ultra 9 285K:1万9652ポイント ・Core Ultra 5 245K:1万9355ポイント 4K ・Ryzen 7 9800X3D:1万1761ポイント ・Ryzen 9 9950X:1万1654ポイント ・Ryzen 9 9900X:1万1861ポイント ・Ryzen 7 9700X:1万1936ポイント ・Ryzen 5 9600X:1万1958ポイント ・Core Ultra 9 285K:1万2092ポイント ・Core Ultra 5 245K:1万2153ポイント どの解像度でも、Ryzen 9000シリーズの中ではRyzen 7 9800X3Dがトップに立った。フルHD/WQHD解像度では、Core Ultra 200Sシリーズも上回っている。 もちろんゲーム自体が重たいので、動作クロックがより高いCPU、あるいはコア数の多いCPUとの差は小さいのだが、Ryzen 7 9800X3Dの位置付けとしては「ミドルレンジ~ミドルハイ」でありながらも、最新世代のフラグシップCPUとほぼ変わらないか、上回るスコアを出せている。3D V-Cache恐るべしと、言うべきだろうか。