スパイスカレーの次は「クラッシュカレー」が来る!カレー研究家・水野仁輔さんがハマったカレーとは?
新たに生み出した“クラッシュカレー”
小竹:とにかく中心にあるのは食材ではなく石臼なんですね。 水野:そう。石臼で叩き潰すことによってしか生まれない香りをカレーにするというのが、去年から今年にかけての僕の世紀の大発見なわけです。叩き潰してクラッシュするので“クラッシュカレー”って…(笑)。
小竹:クラッシュカレーだけ聞くとわけがわからないですね(笑)。 水野:クックパッドで検索してみて、もしクラッシュカレーというレシピが存在したら、僕はその人に弟子入りします(笑)。それで、クラッシュカレーを僕は今作り始めていて、イベントとかで出しているんです。 小竹:うんうん。 水野:ハーブカレーのときとちょっと空気が違うのは、クラッシュカレーという名前がまあまあ評判がいい。だから、若干僕は今、危ういと思っています。 小竹:また同じことが来る(笑)。 水野:そうそう。名前の時点で評判がいいので危ういと思っているけど、まだクラッシュカレーは全然浸透していないから、今僕は石臼に夢中です。本当に石臼の時代がこれから来ますよ。 小竹:来ます?10年後?(笑) 水野:石臼はカレーだけではなく、全ての料理に応用できる調理器具として、これから時代が来ると思います。 小竹:そこまでですか? 水野:石臼って、恐らく世界で最も原始的な調理器具だったはずなんです。石を削って尖らせてナイフが生まれるみたいなことの前なので、きっと世界中で昔は石臼が使われていたんですよ。 小竹:うんうん。 水野:例えば、インドは田舎に行くとまだ石臼があるし、タイ周辺の東南アジアも結構使うし。 小竹:ラオスに行ったときも結構ありました。 水野:ペルーも唐辛子を潰すし、メキシコのサルサも昔は石臼で潰していたんです。 小竹:そうなんですね。 水野:今はもう電動のミキサーが全盛の世界料理の中で、最も石臼が重宝されているのがタイなんです。タイ人のシェフとかは「石臼じゃないとこの香りにならない」って、いまだに言うんです。 小竹:うんうん。 水野:ミキサーは刃で切る、ミルは粉砕する、すり鉢ではすり潰すというように、食材の潰し方はいろいろなパターンがある。その中で、石と石で叩き潰すというものによってどんな香りが生まれるのかというのは、ちょっとこれから掘っていきたいです。 小竹:石臼に夢中ですもんね。 水野:実体験としては、今までに嗅いだことのない香りを嗅げているから、叩き潰すことに意味があると思っていて。これは恐らくみんなが忘れてしまっている香りなんですよ。 小竹:深いですね。 水野:昔の人はこのいい香りを知っていたけど、電動ミキサーになって失われた香りがあって、この失われた香りで調理をスタートしている時代なので、今はもう知らない香りなんですよ。料理をこれから始める人は、石臼で叩き潰したときに生まれる香りをそもそも知らない。 小竹:懐かしいとかもない。 水野:だから、これから石臼で叩き潰したときに生まれる香りを体験する人が増えていくと、石臼じゃなきゃダメな人が出てくると思うんですよね。それこそがクラッシュカレーですね。