BMWのキーマンが明かす「パワトレと水素」戦略、内燃エンジン車、BEV、FCEV…魅力ある車を作る
■課題の1つはFCシステムの高出力化 1つの課題として挙げられるのは絶対的なパワーだろう。iX5 Hydrogenの駆動用電気モーターの出力は295kW。しかしながらFCシステムは125kWなので、全開にしてもモーターの力をフルに引き出せない。 そこで駆動用バッテリーを大容量化することで、パワーが必要な時にはFCシステムの電力に加えてバッテリーからの170kWという大電力も同時に用いるというソリューションが用いられた。次期型に求められるのは、FCシステム単体でも高出力を発揮できることだろう。それは可能だろうか?
「もちろんです(笑)」 あえての問いに、マーティン氏は笑顔で、そして力強く頷いた。言うまでもなく高出力化はBMWだけでなくトヨタも求めるところだろう。この辺りの狙いは共有できているはずだ。 ちなみに2023年に実証実験のため限定導入されたBWM iX5 Hydrogenは、トヨタからFCセルの供給を受けつつ、そのセルを組み合わせたスタックをはじめとするシステム全体をBMWが開発したものだった。今後はどういうかたちを採るのだろうか。
「今の段階ではその辺りはまったく決まっていなくて、まずは技術を一緒に開発するということです。車両を開発する中で第三者から調達するものもあれば、トヨタが開発して提供するものもあり、もしくはBMWが提供する部分もあるかもしれない。それは最終的に相乗効果はどこにあって、両社で何を一緒に生み出すことができるのかで決まると思います。同じものを両社がお互いに作るのではなく、どちらが何を担当して、どうすれば一番効率よくなるのかを見極めること。まずはそこが重要ですね」
その中には水素燃料タンクも当然含まれる。高圧化しても依然としてコンパクトとは言い難い水素燃料タンクは、車両全体のパッケージングにもっとも大きく影響するパーツだ。 「もちろん、タンクに関しても色々開発しています。タンクは非常に重要です。生産、製造を考えた時には、どこまでFCEVをBEVに近づけることができるのかが重要なカギとなります」 ■共同開発したFCEVは2028年に量産開始 同じ車体で内燃エンジン車、BEV、そしてFCEVを成立させる。パワー・オブ・チョイスの中にFCEVを組み込むことこそ、量産化には非常に重要というわけだ。