BMWのキーマンが明かす「パワトレと水素」戦略、内燃エンジン車、BEV、FCEV…魅力ある車を作る
分かっていて聞いたところもあるが、元々こうして柔軟に対応できる態勢をとっていただけに、市場がBEVに振れても、振れなくても、想定の範囲内。ビジネスには概ね影響はしていない、ということである。 「それは競合他社と比較した際にも、こうして全体的なBEVの需要が下がる中で、私たちが成功できている大きな要因と言えます。さらに大事なことは、こうした考え方で生み出された私たちのBEVは、商品としても非常に魅力的なものになっているということです。全体的な需要は落ちていても、BMWに対する需要は落ちていないと感じています。実際、BEVの販売台数の伸びは今年も13~17%の増加を実現しています」
現在では主にPHEVを含む内燃エンジン車とBEVという軸で語られる、このパワー・オブ・チョイスだが、前述の通り将来的にはそこにFCEVも入ってくることになりそうだ。ちょうど9月上旬にBMWはトヨタ自動車と、これまでの10年以上にわたる水素分野での協力関係の一層の強化で合意し、FCシステムやインフラ整備に共同で取り組んでいくと発表したところである。 押さえておきたいのは、これはトヨタがBMWにFC技術を供給するという話ではないということだ。あくまで両社共同で開発していく。では、BMWがFCシステムに求めるのは、どのような要素なのだろうか。
「トヨタとの協力関係は長年続いているもので、常に互いにどういう要求があるのか話し合っています。BMWは商用車への参入には興味がないので、我々が考えているのは、まさにBMWの車両に必要な、ユーザーが望む車両に対応できるFCシステムが欲しいということです。そのためには、まだまだ新しい技術が必要です。BMWならではのダイナミックな走りを可能にするもの、ですね。もちろん、商用車とオーバーラップする部分もあります。『iX5 Hydrogen』ではトヨタとともに経験値を蓄積できました。BMWのダイナミックな走りを実現することと高い牽引能力。iX5 Hydrogenでは、まずそれを実現できたと考えています」