「いい子でいようって思っていました」虐待きっかけで非行に走った少年(17)が、それでも親からの暴力を正当化してしまう“哀しい理由”
「そんなふうに言ってくれる人、いままでいなかった」
中学生になり、体も心も大人になってきている。自分のされていることがどういうことかも気づいているだろう。力で対抗することもできるし、自分の感情だってある。 しかし、たとえ自分を殴る親であっても、嫌いになれない気持ちがあるのがわかった。「僕が悪い」――そう思えば、親の暴力を正当化できる。コウタだけではなく、そう思うことで自分を納得させている子どもは大勢いるのかもしれない。 「いままで、学校の先生とか友達の親とかには、そういうこと話したことってある?」 「小学校のときの先生は、親のことを知っていたと思います。中学でも……。でも何も言われなかった」 「助けてくれたっていうか、心配してくれた人はいないの?」 「1回だけあります」 友達のところに遊びに行ったときのことだ。何気ない会話の中で、その子のお母さんに、「家で何してるの?」と聞かれた。コウタは、ご飯とか家のことはだいたい自分でやっていると話した。「なんでやってるの?」とさらに聞かれて、「親が店やってて、お父さんも夜遅く帰ってくるから」と話した。 そして数日後、その友達のお母さんが、コウタの母にその会話を伝えた。友達のお母さんがコウタの母にどう話したかはわからない。結果、その次の日の朝、勝手に他人の家に行ったりするな、余計なことを言うなと、母親にひどく怒られた。 「そう、言われてどう思った?」 「ダメなんだと思った。もう言っちゃいけないんだと思った」 「言った自分が悪かったって思ったの?」 「そう思ったのと、諦めと半々」 コウタはそう言ったが、私はそう思えなかった。 「嘘をついたことも、誰かに話したことも、私は悪かったって思えない」 コウタが目を見開いて私を見た。 「嘘をついたのはいけないかもしれないけど、だって嘘をつかないといけない状況だったじゃん。その環境ってつらいよ。まわりの人にSOSを出したときもそう。コウタひとりではどうにも変えられない環境にいて、つらかっただろうなってすごい思う」 コウタは私に向かって、 「そんなふうに言ってくれる人、いままでいなかった」と言った。 「ここにいたい」「家に帰りたくない」…少年院生活に依存するコウタ(17)が明かした“意外な本心” へ続く
中村 すえこ/Webオリジナル(外部転載)
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