「いい子でいようって思っていました」虐待きっかけで非行に走った少年(17)が、それでも親からの暴力を正当化してしまう“哀しい理由”
両親に殴られた兄、両親と兄に殴られたコウタ
最初に父、母の両方から殴られるようになったのは、3歳上の兄だった。理由はわからない。そして、両親に暴力を振るわれた兄は、その腹いせに弟のコウタに暴力を振るうようになった。それはコウタが小学4年生になるくらいまでつづいた。 兄は家出をくり返し、非行(犯罪)行為が進んでいった。そして同時期、どういった経緯かわからないが、兄は施設に入れられた。施設に移った兄は、コウタが中学生になるまで自宅に戻ってくることはほとんどなかったという。親が拒否したのか、本人が帰りたくなかったのかはわからない。兄は施設を出た後も、家に帰ってくることはなかったという。 「じゃあさ、お兄ちゃんがいなくなったわけだから、コウタは殴られなくなったってこと?」 コウタはまた首を横に振った。 「今度は両親からの暴力がコウタに?」 そして、うなずいた。 「お兄ちゃんは、非行少年みたいな感じで。それを見てて、自分はああなりたくないなと思いながら、お兄ちゃん方の道に少しずつ近づいちゃっていたみたいで」 「どういうこと?」 「だからお母さんたちはそれを、やめてほしかったみたいで……」 「その、お父さんとお母さんのやめてほしい気持ちが、暴力っていうか、そういう形になっちゃったっていうこと?」 コウタがこくりとうなずく。 核心の部分はわからないが、両親がなぜコウタと兄を殴っていたかは、コウタの記憶の中から見えてきた。
柱に縛りつけられて放置され……
当時、養父はトラック運転手をしており、母はパチンコ屋の店員だった。コウタが小学生になると、父は夜勤で留守が多くなり、母は夜も居酒屋で働きはじめた。日中も夜も兄と2人で留守番をしながら、母親の帰宅を待った。 「お母さんってどんな人なの?」 「小さいときは、すごい怖かった」 コウタが母親に怒られたときのことを話しはじめた。 小さいとき、もう何をしたか覚えていないくらい前の話だ。住んでいたアパートの一室で怒鳴られ、玄関の外に放り出された。母親はアパートの2階部分を支える柱にコウタを縛りつけ、そのまま放置した。コウタはそのときのことをこう話す。 「とにかく怖かった。近所のおばさんたちが部屋から出てきて、縛られている僕を携帯カメラで撮っていて、誰も助けてくれなかった」
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