「いい子でいようって思っていました」虐待きっかけで非行に走った少年(17)が、それでも親からの暴力を正当化してしまう“哀しい理由”
殴られるのは「自分が悪いから」…
コウタは母親のことを、「怖かった」としか言わない。 「暴力ってさ、日常的にあったの? それとも、ぶたれる前にこういうことがあったとか、何かがあったときにやられてた?」 「親の言うことを聞いてないときです」 「例えばどんなこと?」 「何かってことではなく、親がこれをやめろ!とか言ってることをやめなかったら、殴られる。お兄ちゃんは、かかとを踏む踏まないでボコボコにされてました」 「かかとって靴の?」 「はい。踏まないって注意して、また踏んでたから殴られる。嘘ついたからってさらに殴られる。もう、顔パンパンになってた」 「どっちに?」 「それはお父さん。馬乗りにされて」 「そんときはお兄ちゃんも小学生だよね?」 「小学校6年生か5年生」 「お母さんは止めに入ってくれなかった?」 「入ってない。一緒に怒鳴ってる」 「お前が悪い、みたいな?」 コウタがうなずいた。 コウタの話だけを鵜呑みにしてはいけないが、コウタにとって、親は自分を攻撃してくる人になっていたということだ。 暴力はコウタが中学生になってもつづき、家に帰りたくない気持ちはますます強くなっていた。 ちゃんとしていないと殴られるから、とコウタは言っていたが、私はその言葉がとても気になった。 「いい子にしていないといけない、ってこと?」 「そうしてないといけないし、そうできない自分が悪いから」 自分が悪い? コウタはそう言っているが、できない子どもは悪いのか。できないことをひとつひとつ教えていくのが子育てで、それができる楽しみがあるというのが親なんだと思うが……。 「なんでいい子にしていないといけないって思ったの?」 「お父さん、仕事で疲れてるし、約束とか守らない自分が悪いから、そうゆうことしないように、いい子でいようって思っていました」
コウタの話からは家族団欒の様子がまったく浮かんでこなかった。 両親に気を使い、いい子でいなきゃ許されない状況は、安心できる居場所ではない。私の家も父の機嫌で空気が変わってしまう日があった。私たち子どもに暴力を振るうことはなかったが、重くピリピリした空気が流れる家は居心地が悪かった。 父の機嫌が悪いのは、私の責任だったのだろうか。コウタの両親が「いい子じゃないから」と子どもを殴ることは許されることなのだろうか。 環境を選択することができない子どもは、その現状を受け入れるしかない。こうやって自分を犠牲にしている子どもたちは社会にどれくらいいるのだろう。
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