「いい子でいようって思っていました」虐待きっかけで非行に走った少年(17)が、それでも親からの暴力を正当化してしまう“哀しい理由”
「家にいると怖い。違うところで笑っていたい」
中学生になり、友達の多いコウタは学校生活を楽しんでいた。放課後は部活動に参加するなど、まわりから見れば何の問題もない普通の子どもだった。ただ自分が親に殴られていること以外は、だ。 コウタはその事実を、誰にも言っていなかった。 私は、コウタの言っていた「他人から見ればすごいいい家族なんだろうなって、でも僕から見ると……そうじゃない」の意味がやっとわかってきた。 部活に入っていれば、家に帰る時間が遅くなる理由ができる。中学生のコウタにできる最大限の言い訳だ。部活が休みの日は、親に嘘をついて友達の家で過ごしていた。 「17時に部活終わって、学校から家まで30分ぐらいだから、友達の家から自宅までを計算して、いつも通りの時間に家に帰ればバレないと思って」 ある日、友達の家に寄ってから帰宅すると、母親が待ち構えていた。部活に行っているという嘘がバレていた。友達を巻き込むわけにいかない。コウタは嘘をつき通した。 子どもの頃は、親より友達の方が大事だと思う時期もある。嘘をついて友達と過ごすこともある。でも、コウタの場合は少し違う。 コウタが嘘をつくのは、自分を守るためだった。 「家にいても落ち着かないっていうか、なんか怖いっていうか。違うところにいて笑っていた方がいいから」 「私は家に帰りたくないってことがなかったのね。だからそのときって、どういう気持ちだったのかなって。本当は家に帰りたいけど、帰っても怖いとかつらい思いとかするから帰りたくなかった? それとも遊んでいる方に魅力があったの?」 「帰りたくないっていうか、帰れない、かな……」 帰れない、か。頭の中でその言葉を考えていた。私が黙っていると、コウタが自分の発した言葉に重ねるようにつぶやいた。 「帰りたいという気持ちもあるけど、べつに家にいても何か楽しいことあるわけじゃないし、なんで俺だけこんな思いを、という気持ちもあって。でもよくわかんない気持ちで……」
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