【毎日書評】「must(するべき)」思考から解放、折れないこころをつくる近道は?
柳は、強い風が吹くとすぐにたわむので弱い木のように見えますが、風がやめばもとの姿に戻ります。しかし、まっすぐで硬い木は、ちょっとの風ではびくともしないので強く見えるものの、強風にポキッと折れてしまうことがあります。 『不安を味方にして生きる: 「折れないこころ」のつくり方』(清水 研 著、NHK出版)の著者によれば、こころも同じ。ストレスがかかったとき動じないように無理をすると、ある一線を越えて突然破綻することがあるわけです。 「折れないこころ」とは、柳のようなイメージです。強いストレスがかかったとき、不安などのネガティブな感情を抑えつけようとするのではなく、「不安な気持ちが、こころのなかにあっていい」と、まず認めるところからスタートすることが大切です。(「はじめに」より) 20年以上、がんの専門病院で診療を続けている精神科医。これまで少なくとも4,000人以上のがん患者と対話してきたそうですが、負の感情を味方にする方法をすぐに実践できる人がいる一方、なかなか受け入れられず、苦しみが長引く人もいるようです。 苦しみ続けてしまうタイプの人は、自分のなかにある不安や悲しい気持ちを押し殺さなければならないと感じているのだとか。その背景には、「こういうときはこうしなければならない」という規範意識=「must」思考があるといいます。誰にでもあるものではありますが、「must」の縛りが強すぎると、「そんな自分ではダメだ」と、本当の自分の気持ちを認めることが難しくなるわけです。 「must」思考から距離をとることは、不安を味方につけるためにも重要な意味があるのだと著者はいいます。そこで本書では、個人的な体験やエピソードなども交えながら、不安を味方にするための方法を明かしているのです。 きょうはそのなかから、「must」について触れた第5章「自分を解放するために」に焦点を当ててみたいと思います。